『星が溢れる』(創作)
高くそびえるビル群の小さな隙間に星が見えた。
─ 久々に空 見たな ─
星が溢れるとは言い難い疎らな星空に、ほんの一瞬だけ日常を忘れたが、立ち止まる余裕はなく、すぐ様透明な日常に溶け、足早に歩を進めた。
何の色もない日常だ。何のために生きているのかわからない程に心にも色がなかった。
星が溢れる空のように、だだっ広く壮観で美しい感動を味わうには、それを味わう心と、余裕が必要だと悟った。
『安らかな瞳』
その安らかな瞳には、安らかなものしか映らない
曇りなき瞳には、闇はおろか光すら映らない
心の瞳は感化されやすいから、リアルなど映してはいけない
『ずっと隣で』(創作)
「ママ、これ、よんで。」
幼い娘からのお願い事だ。断れるわけがない。
「ベッドで待っていて。」と、わたしは優しくありったけの笑顔で返した。まだパソコンの仕事が残っていたが、優先順位をつけ、まずはシンクの洗い物を片付ける。
パソコンでのデータ作成の期日は明日だが少しくらい大丈夫だろう。早く娘の元へ行きたくて、気もそぞろに家事を終わらせた。
「おまたせ。さあ、絵本をかして。」と、またわたしは優しくありったけの笑顔で、ベッドにいる娘の隣に潜り込んだ。絵本は“オズの魔法使い”だ。娘のお気に入りの本だったが、娘は物語の途中しか知らない。なぜなら、いつも途中で寝てしまうからだった。
昨日の続きから読み始める。娘は目を輝かせながら聴き入っている。この分なら、すぐに眠りにつき、仕事ができるな…と、踏んでいた。
ところが、今夜に限って娘はなかなか眠らない。カカシとブリキとライオンとの冒険を楽しんでいる。
ずっと隣で絵本を読み聞かせながら、わたしは内心焦った。
でも、止めるわけにはいかない。娘のキラキラした瞳を見ていると、止めたくなかった。
「ママ、起きなくて大丈夫か?」
夫の声に、わたしは飛び起きた。なんということか、わたしは娘と一緒に寝てしまっていたのだ。ずっと隣で寝ていたことになる。時計の針は夜中の1時をさしていた。
まだ間に合う。今夜は眠れない夜になりそうだ。
夫がコーヒーを淹れながらニコニコしている。どうやら、仕事が終わるまで付き合ってくれるらしい。
「お疲れさま。仕事と育児、たまにはこんな夜もあるさ。」
ずっと隣で、妻でいたいと思った瞬間だった。
『もっと知りたい』
「知欲」は人間だけが持つ欲です。
でも、知ってしまったら知る前には戻れません。
「もっと知りたい」は、シーンや相手や題材を選ぶことをオススメします。闇雲に知欲を満たし、知ってしまった後悔がありませんように。
『平穏な日常』
猫さんが可愛すぎて、きゅん死寸前な日常は、平穏な日常と言っていいのか迷います。悶絶級の可愛さは体に悪そうです。