【168,お題:ずっとこのまま】
ずっとこのまま
半透明な殻の中で 甘ったるい理想の中で
時間なんて 意識なんて 感覚なんて
全部手放した孤高の海の中心で
猟虎のように浮かんでいたい
【167,お題:寒さが身に染みて】
寒さが身に染みて、吐く息が白くて
悴んだ指先を擦り合わせながら思うんだ
「今日はあったかい布団で寝よう」
【166,お題:20歳】
20歳、成人式
もう貴方は大人なんだと、無理やり認識させられる
ここから先は自分の足で立たなければいけない
支えが急に無くなるわけではないが、それでも心細い
もう笑って誤魔化すことはできない、何をするにも付きまとう責任
大人になるって、苦さを知ることだ
社会の苦さ、人間関係の苦さ
世知辛いなあ、
薄く息を吐いて缶コーヒーを飲みながら
生まれたての大人が呟いた
【165,お題:三日月】
三日月型に歪められたその瞳の深意に
細胞の一つ一つまで見透かす鋭利な双眼に
気付く頃には遅いというもの
【164,お題:色とりどり】
色とりどりの紙が周りを包囲している
その中心に鎮座しているのは、少し前に誕生日を迎えたばかりの2歳の娘
屈託なき笑顔で散らばった色とりどりの折り紙と戯れている我らがプリンセス
思わず目眩がした、誰だここに折り紙放置して外出したのは、......俺なんだよな
残念ながら妻は育児に疲れて奥の寝室で寝ているし
いつも頑張っているところを見ているから起こすのも忍びない
仕方がないので俺がプリンセスのお相手役というわけだ
「彩花ー、パパ帰ってきたよー」
にへへ、と笑う娘
思わず頬が緩む、真後ろの世紀末がなければ癒されたんだろう
側に寄ってさらに絶望、折り紙の上からジュースをこぼしている。勘弁して下さいプリンセス
「ぱーぱ!だこぉー」
両腕を広げて背伸びをしている娘、それだけでまあいっかと許せてしまうから不思議だ
......やっぱり片付けは後にしよう