【真夏の記憶】

あの日、胸の奥に隠していた言葉が
熱を帯びた風にほどけていく

透明な水面に
新しい感情のしずくが落ち
波紋が静かにひろがった

まっすぐに駆け抜けた
灼けつく陽のまなざし
それは未来よりも鮮やかに
今も心を照らし続けている

夏は去っても
あの瞬間の鼓動だけは
まだ ここに生きている

【こぼれたアイスクリーム】

白い夏の日
手のひらにあった甘い夢が
ぽつり、と
地面に落ちた。

溶けてゆく色は
笑い声と共にあった景色を
少しずつにじませていく。

拾い直せないことを知りながら
私はその跡を見つめる。
胸の奥で
別の手のぬくもりを探しながら。

風が追いかけてくる。
片方の手には
まだ残っている、小さなスプーン。
それを握りしめ
次の甘さをすくう日を
静かに待っている。

【やさしさなんて】

やさしさなんて
飾られたことばではなく
指先で差し出す一杯の水のように
ひっそりと、でも確かに
誰かの渇きを癒すものだ

流れの中で向かい風を受けても
目を逸らさず
そっと背を支えるぬくもり
その重さも形も
測ることはできない

ただ、帰る場所のように
心の奥でひらかれた扉が
静かに灯っている
その光に
わたしたちは気づかず救われている

【夢じゃない】

静かに積み重ねた日々が
やがて形となって輝き出す

迷うときも
流れはあなたを選び
途切れぬ鼓動が未来を織り続ける

これは偶然じゃない
夢じゃない
あなたが選び…。

【心の羅針盤】

風のない金曜日の午後
胸の奥で、静かに花がひらく。
誰に見せるでもなく、ただ凛と。

迷う日もある。止まる日もある。
でもそのたびに
小さな声がささやくーー
「こっちだよ」と。

誰かの地図はいらない。
自分のリズムで歩けばいい。
心が感じる方向こそが
ほんとうの自由へと続いている。