#2 「友達」
私には小学時代から付き合いのある親友がいる。小学生の時習い事が同じで知り合い、高校とバイト先も同じだったアイ(仮名)だ。私たちにはある共通点があった。それは三姉妹だということだ。私は次女。アイは長女だ。家族構成が似ているからなのか、私たちはとても波長が合い、お互い一緒に過ごす日々がとても心地よかった。
アイとは家族ぐるみで付き合いがあり、高校時代はアイのお母さんが私を家まで送ってくれたり、私の妹とアイの妹も連れて映画を見に行ったり、とにかくずっと一緒に過ごしていた。
私とアイには「お互いに三姉妹」ということだけには留まらない不思議な縁があった。怖いくらいに共通点が多いのだ。
私の姉(長女)とアイの上の妹(次女)の誕生日が同じで、さらに、私の妹(三女)とアイの下の妹(三女)の誕生日が同じなのだ。私とアイの誕生日も同じだったら完璧だったね、という会話を幾度となくしてきた。これ以外にも、お互いにいとこがいないということや2人とも高校受験に失敗したことなど、共通点は数多くある。こんなにも同じだなんて、私たちは単なる偶然ではなく不思議な縁で結ばれていると思う。
先日、アイと一緒にカフェに行った。普段と同じように他愛のない、心底くだらない話でゲラゲラ笑っていた。その時ふと、アイがこう言った。「うち、〇〇(←私)といる時だけ全くイライラしないんだよね。ほかの人だとよくイライラすることあるのに」
私は心底嬉しかった。普段アイがこのように言ってくれることはない。10年以上一緒にいて初めてだった。その嬉しさと感謝の思いを私はそのままアイに告げた。これから先どんな大喧嘩をしても、きっとアイと離れることはないだろう。離れるなんて私たちには無理なんだと思う。切っても切れない縁というのはこういうことを言うのだとしみじみ思う。アイが私に伝えてくれたあの言葉を私は一生忘れることはないだろう。
#1
「行かないで」
私にはこの言葉が言えなかった。あの時「行かないで」と言えていたら何か変わったのだろうか。
高2の春、保育園から中学校までずっと同じだった男の子と2人で桜まつりに行った。2人きりで遊びに行くのは2度目だった。遊びに行くきっかけは、相手が私に好意を抱いてくれていることを親友から聞いたこと。相手の好意を知った以上、その人のことを意識せずに生活するなど私にはほぼ不可能だった。2人きりで遊ぶことを提案したのは、2回とも私だった。恋愛経験ゼロの私は、何とかこのチャンスをモノにしたいと内心焦っていた。
桜まつりの別れ際、彼が「受験勉強に集中したいから受験が終わるまではもう遊ばないことにしよう」と言った。彼が国内でトップレベルの大学を目指していることは知っていたから、仕方がないことだと了解したものの、その頃には私も彼が好きだった。
その年の7月、彼の誕生日に私は彼に告白することにした。と言っても、受験が終わるまで彼には会えないし、誕生日に突然電話をかけるのも気が引けて、私はLINEで告白した。正直、完全に判断を間違えたと思う。LINEで告白だなんてありえない!と今の私なら言うだろう。完全な早とちりだった。私たちは東北に住んでいて、彼が目指している大学は東京だった。離れ離れになる前に、高校生のうちに付き合いたいという焦りが私の判断を誤らせた。私の突然の告白に、彼からは「今本気で〇〇大学目指してて、受験に集中したいからゴメン」とだけ返信が来た。
彼は第1志望こそ逃したものの、東京の超ハイレベルな大学に進学した。私は北海道の大学に行くつもりだったが、見事に落ちて名も知られていない地元の私大に進学した。彼とのLINEはあの時の彼からの返信に対して「そうだよね。私こそごめん急に」というもので止まっている。
彼の大学受験は本当に応援していたから、「東京行かないで」なんて私の口からは決して言えなかった。でも高2の春、桜まつりの別れ際、「まだ行かないで。もうちょっと一緒にいようよ」なんてことが言えていたのなら、もう少し長く彼と一緒にいられたのだろう。彼との別れはあまりにあっさりしたものだった。