中間子

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#1
「行かないで」
私にはこの言葉が言えなかった。あの時「行かないで」と言えていたら何か変わったのだろうか。
高2の春、保育園から中学校までずっと同じだった男の子と2人で桜まつりに行った。2人きりで遊びに行くのは2度目だった。遊びに行くきっかけは、相手が私に好意を抱いてくれていることを親友から聞いたこと。相手の好意を知った以上、その人のことを意識せずに生活するなど私にはほぼ不可能だった。2人きりで遊ぶことを提案したのは、2回とも私だった。恋愛経験ゼロの私は、何とかこのチャンスをモノにしたいと内心焦っていた。
桜まつりの別れ際、彼が「受験勉強に集中したいから受験が終わるまではもう遊ばないことにしよう」と言った。彼が国内でトップレベルの大学を目指していることは知っていたから、仕方がないことだと了解したものの、その頃には私も彼が好きだった。
その年の7月、彼の誕生日に私は彼に告白することにした。と言っても、受験が終わるまで彼には会えないし、誕生日に突然電話をかけるのも気が引けて、私はLINEで告白した。正直、完全に判断を間違えたと思う。LINEで告白だなんてありえない!と今の私なら言うだろう。完全な早とちりだった。私たちは東北に住んでいて、彼が目指している大学は東京だった。離れ離れになる前に、高校生のうちに付き合いたいという焦りが私の判断を誤らせた。私の突然の告白に、彼からは「今本気で〇〇大学目指してて、受験に集中したいからゴメン」とだけ返信が来た。
彼は第1志望こそ逃したものの、東京の超ハイレベルな大学に進学した。私は北海道の大学に行くつもりだったが、見事に落ちて名も知られていない地元の私大に進学した。彼とのLINEはあの時の彼からの返信に対して「そうだよね。私こそごめん急に」というもので止まっている。
彼の大学受験は本当に応援していたから、「東京行かないで」なんて私の口からは決して言えなかった。でも高2の春、桜まつりの別れ際、「まだ行かないで。もうちょっと一緒にいようよ」なんてことが言えていたのなら、もう少し長く彼と一緒にいられたのだろう。彼との別れはあまりにあっさりしたものだった。

10/24/2024, 2:51:05 PM