「奇跡をもう一度」
●「おい知ってるか?どうやらあっちの世界に逝っ
たら人生逆戻りになってるらしい」
◯「逆戻り?」
●「死んじまった歳からまた人生始まるんだって
よ」
「遡っていくんだ、だからどんどん若返ってい
くわけよ」
◯「へぇ〜、だけど、最後はどうなるの?赤ん坊に
まで戻って、そのあと一体どうなるの?」
●「母ちゃんの腹ん中に戻んだよ、また生まれるん
だよ、この世に」
◯「ぼく、また生まれるんか」
「母ちゃんのお腹の中、すごく心地よくて、ぼく
生まれたくないなぁ・・・」
「あれ?ぼく、なんでお腹の中での記憶あるんだ
ろう・・・」
●「おーい、聴こえてるか?元気に生まれてこい
よ〜母ちゃんも父ちゃんもお前に会えるの楽し
みにしてるぞ」
◯「あれ、父ちゃんの声が聴こえる・・・なんだ、
えっ、ぼくまた生まれるんか?」
「嫌だ、ぼくまだ生まれたくない、ずっとここに
いたい」
「またあの世界で、あんな思いしたくない、父ち
ゃんに酷いめにあわされるんだ」
「嫌だ嫌だ嫌だ・・・」
「なんだか、眠くなってきた・・・あれ、ぼくっ
てだれだ・・・?」
「まだ生まれたくない」
「たそがれ」
空の赤さかき消す
焚き火の赤
パチパチはぜる音
虫の鳴き声微かに
秋の夕暮れ
「きっと明日も」
私は私に会う
「静寂に包まれた部屋」
少女がさめざめと泣いている
死神が静かに少女を抱き締めた
やがて少女は微笑を浮かべ永い眠りについた
「別れ際に」
長く深い口づけのあと
「さよなら」と一言
私はひとり膝を抱え
嗚咽を洩らす