「突然の君の訪問。」
遠い昔の恋
僕も君も年を取ったね
夢の中の君は相変わらず綺麗だ
「雨に佇む」
息を深く吸う
雨の匂いがあの日を思い出させる
もういいかい
もういいかい
まあだだよ
まだここに居たい
「私の日記帳」
私は日記というものが嫌いだ
人間はいつ死ぬかなんて誰にもわからない
私という存在がこの世から無くなるのに、日記帳だけがこの世にとどまる
私の密かな人生が日記帳につまっているのだ
それを誰かに読まれたりしたら・・・
今、私の目の前に古い日記帳が置かれてある
この日記帳の中には母の人生がある
そっと1ページ目をめくってみる
○月×日
今日、私は母親になった。
この小さな命の産声をきいた瞬間、私の心の中に黒いなにかが蠢いた。
きっと私は、心からこの子を愛せないだろう。
本当は私だってたくさんの愛情をこの子に与えられる母親になりたい。
でも、どうやってこの子と向き合っていけばいいかわからない。
だって私、お母さんから愛されてなかったんだもの。
愛し方なんて、これっぽっちもわからない。
この子は生まれてきちゃいけなかったのよ。
私は震える指先で日記帳をとじた
だから日記なんて嫌いなんだ
読まなければよかった
もしも、私の日記帳を娘に読まれたりしたらと思うと死にたくなる
私の心の中にも黒いなにかが蠢いている
「向かい合わせ」
僕らは見つめあい
向かい合わせで座っていた
きみは突然
僕を抱き寄せた
一体どうしたんだろう
きみは少し震えている
何故だろう
僕の体は湿り気を帯びてきた
ふいに離れたきみを見たら
ポロポロと涙を流していた
僕はどうしたらいいかわからず、きみの膝の上へ飛び乗り涙を僕の舌ですくいとってあげた
昔、きみが連れていってくれた海の味がした
悲しまなくていいんだよ
僕はもうすぐきみのもとからいなくなる
今まで本当にありがとう
楽しかったよ
きみと一緒に過ごせてとても幸せだった
僕らは向かい合わせになる
きみを上目遣いで見つめ僕は泣く
「ワンッ」
「やるせない気持ち」
僕はきみに溺れた
きみは僕の知らない誰かに溺れている
毎日を窒息しそうなくらい苦しく過ごす僕
人は出会い別れる
哀しいかな
誰か、僕に浮き輪を投げてください