「私の日記帳」
私は日記というものが嫌いだ
人間はいつ死ぬかなんて誰にもわからない
私という存在がこの世から無くなるのに、日記帳だけがこの世にとどまる
私の密かな人生が日記帳につまっているのだ
それを誰かに読まれたりしたら・・・
今、私の目の前に古い日記帳が置かれてある
この日記帳の中には母の人生がある
そっと1ページ目をめくってみる
○月×日
今日、私は母親になった。
この小さな命の産声をきいた瞬間、私の心の中に黒いなにかが蠢いた。
きっと私は、心からこの子を愛せないだろう。
本当は私だってたくさんの愛情をこの子に与えられる母親になりたい。
でも、どうやってこの子と向き合っていけばいいかわからない。
だって私、お母さんから愛されてなかったんだもの。
愛し方なんて、これっぽっちもわからない。
この子は生まれてきちゃいけなかったのよ。
私は震える指先で日記帳をとじた
だから日記なんて嫌いなんだ
読まなければよかった
もしも、私の日記帳を娘に読まれたりしたらと思うと死にたくなる
私の心の中にも黒いなにかが蠢いている
8/26/2023, 11:51:31 PM