好きな人が転校する。
そう知ったのは昨日で、
転校するのは、今日。
学校へ行くのも嫌になったが、連絡先も持っていないので、仕方が無く行くことにした。
一日中上の空で、窓辺の僕の席には、柑橘色の斜陽が差していた。
いつもよりもバッグが重かった。
足音がしてつい視線を向ける。
話したことのない同級生。
つい下を向いて、そして唇を噛み締めた。
誰もいない下駄箱で靴を履き替える。
地面とにらめっこしながら歩き始め、
門へ視線を向ける。
なんと、僕の好きな人がいたのだ。
胸が弾ける思いだった。
僕に気がつくと、小走りでやって来た。
「これ、、」
そう言うと彼女は手を差し出してきた。
手には一輪の白い勿忘草と、羅列した数字の書かれた紙切れ。
僕は、じわじわと顔に血液が集まっていくのを感じていた。
届いた。
久しぶりにブランコに乗ったら葉に。
今度はもっと沢山触れる気がして、もう一回漕ぎ始めた。
無機質な音が響く
ピッ
ピッ
ピッ
ずっとパソコンばかりで体力が落ちているのか、胸が痛む
休もう、少し
どこからともなく声が聴こえた
声の方へとふと顔を上げる
小学生のときに、目の前で死んだ
友達だった
事故で呆気なく消えた命。
手を伸ばすとまだ届かなかった
あと少し
なにかに取り憑かれたように漕ぐ。
休んで漕ぐ。
漕ぐ、また。
漕ぐ、漕げ、まだ。
手を伸ばすとやっと届いた
私の歓喜に満ちた表情とは対称に
今にも泣き叫びそうな顔をしていた
微かに聴こえた。
まだ
来ちゃ駄目
その必死な雰囲気に怖気づくとつい、手を離してしまった
友達はどこか、淋しそうな
そして安堵したような表情で笑った
その瞬間、一気に鉛が伸し掛かってきた
そのまま下へ落ちてゆく
ハッとし起き上がると知らない天井だった
無機質な音が響く
心電図だ
体に痛みを感じて見ると、包帯だらけの体
違和感を感じて押さえる。
聞こえない片耳
そうだ
事故で
私はどこか遠くへ行きかけたのだ
そう思うと全身に鳥肌が立った
友人に2度も助けられるとは
モノクロの映像に鮮明に色付いていく赤
掌に染み付いた友人の背の温もり
窓の外には大樹に乗って、目を見開いた友人がいた
友人の体は所々黄ばんだ白が出ていて、絵の具のチューブのような色が散りばめられていた
サプライズだろう
なんて優しい友人なんだ
私は手を振った