秋の夜風が好きだ。冷たく、肌を突き抜けていく。程よくひんやりしていて、心地いい。そろそろ長袖を出そうかな。
秋の夜風が好きだ。冷たく、肌を突き抜けていく。程よくひんやりしていて、心地いい。そろそろ長袖を出そうかな。
「形あるものはいつか壊れる」ってよく言う。でも形のないものが壊れないわけじゃない。友情とか愛情とか、少しの諍いで簡単に破綻する。自分1人だけの力で直せるものでもないし、元の形がわからないから修復も難しい。友情に形があったら、イジメも喧嘩もなくなるのだろうか。
『形のないもの』
始まりは多分、公園のジャングルジム。てっぺんまで登って、2本の足だけで立つ。風に吹かれるあの感覚。気付けば忘れられなくなっていた。母からは「危ないから降りなさい」と何度も言われたが、私の心はもうあのジャングルジムのてっぺんにしかなかった。
幼稚園を卒業したころだろうか、私はジャングルジムでは満足できなくなっていた。ありとあらゆる高所に登り、もう一度あの感覚を味わおうとした。木、建物の屋上、山…
そして私は遂にエベレストを制覇してしまった。
しかし、心は満たされなかった。危険過ぎたり、下が見えなかったり、時には立つことすらできなかったり…
理由は様々だが、ジャングルジムのあの絶妙なスリルを味わうことは決してなかった。
もうダメなのだろうか…
そう思い絶望していた時、一つのアイデアが降りてきた。
ここから飛び降りたら、もっとスリルを感じられるだろうか?
『ジャングルジム』
私とあなたとの距離は、飛行機で9時間、そのあと車で3時間かかる。ちゃんと会えるのは1年の内僅かな間だけ。2人きりの時間は多分24時間にも満たない。そんなに遠くにいるあなたと、家にいながらお喋りできるっていうのは不思議な感覚だ。文面だけじゃわからない声の高さや大きさ、テンション。電話口ではしゃぐ子どもの声であなたがちゃんと無事なのが伝わってくる。きっとあなたも同じでしょう?
声が聞こえる。それがどれだけ画期的で素晴らしいことか。
『声が聞こえる』