ノーム

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6/6/2024, 10:23:32 AM

『最悪』 210


もろびとこぞりて業を焼く

白いゼラニウムの花を
警告灯が朱色に染める
あなたの犠牲があって初めて
他人はあなたを求め出す

「止まれよ止まれ
止まりなさい」

『今さら何をおっしゃいますか』

揺れる花はチグリジア
気付いて欲しいとその身を捩る
雛鳥のように口を開けて
あなたは餌を待つばかり

『私を救って
助けて……お願い』

「今さら何をおっしゃいますか」

黒いカラスの羽が舞う
ノイズのように視界を覆う
無意味なものに気を取られ
観てないものが多すぎた

日が暮れた
気が触れた
湿った空気が
流れていった

もろびとこぞりて業を焼く

『止まれよ止まれ
止まりなさい』

『今さら何をおっしゃいますか』

5/27/2024, 10:46:41 AM

『天国と地獄』


青空には沢山の魚が泳いでいて、近所のパン屋さんが毎朝、青空に向かって焼きたてのパンを放り投げるんです。
そのパンに群がった魚で雲ができて、パンを食べた魚はお腹が膨れ、感謝の涙を流します。

「ありがとう」
「ありがとう」

近所のパン屋さんは、とても凄い人なんです。

虹の滑り台で遊びたいと思いました。
星空の海を泳ぎたいと思いました。
沢山の人と友達になりたいと思いました。

小さい頃の友達はコオロギです。
捕まえては名前をつけました。

「太郎」
「次郎」
「花子」
「陽子」

最後はみんなが帰っていくのを見送りました。
私から逃げるように跳ねては、草むらへと消えていくんです。
寂しいけれど仕方がないんです。
友達だと思っているのは、自分だけなんですから。

夜空の月を観ました。
ドロリと輪郭が溶けていって、それは天の川になりました。
川を覗くと星達が泳いでいます。
月の周りで星達が感謝します。

「ありがとう」
「ありがとう」

これで月は寂しくありません。

昔から今まで、私はついに変われませんでした。
秘密主義で自己愛が強く、空気の読めない理想主義者です。
誰かに頼らなくても、何だかんだと生きていけます。

これまでだってそうでした。

人が楽しそうにしてるのを見るのが好きです。
……混ざろうとは思えません。
幸せそうに笑ってる人が大好きです。
……自分には無理でした。

たまに誰かと話したくなって、人里に下りてくる熊みたいに人と関わろうとします。
でも結局、その度に自分の爪や牙が誰かを傷付けてしまうんです。

何時だったか、私はあまり人とは関わらない方が良いんじゃないかと、白々しくそう思いました。
本当は昔から分かってたんです。
解ってたんですけどね。

何だか寂しくって……駄目ですね。

5/15/2024, 8:02:55 AM

『風に身をまかせ』


線香の煙がたなびいては消えた
風に揺られては薄くなっていく

「記憶に残った、あなたの顔みたいだね」

線香の煙が立ち上っては消えた
風に揺られては散らばっていく

「記憶に残った、あなたの声みたいだね」

写真のあなたは変わらないから
幾年経っても変わらないから
毎日わたしは線香をあげる
あなたの為のおくりもの

線香の煙が私を巻いては抱きしめる
風に揺られては身をまかせていく

「忘れちゃった、あなたの温もりみたいだね」

4/3/2024, 6:46:47 PM

『1つだけ』


古い時計の振り子が揺れる
重くて鈍い音を刻む
数字の並んだ時計盤には
ひしゃげた針が一つだけ

忘れ去られた庭園が荒ぶ
哀愁と寂寥の風が吹く
朽ちゆく老木の枝の先には
散らぬわくら葉が一つだけ

黄ばんだ手紙が床へ散らばり
微かな追憶を部屋にもたらす

思い出すのは一つだけ
過去の約束を一つだけ
その恵まれた一つによって
私の世界が満たされたんだ

3/25/2024, 5:29:38 PM

『好きじゃないのに』


昏い感情を口から吐き出し
平気な顔して痴態をさらす
後から理由を探しては
勝手に自分で暗示をかける

『綺麗事では生きられない』
『それがこの世の常だから』
『何があっても仕方がない』
『世の中そんなに甘くはない』

嫌いな台詞を着飾って
尖った言葉でヒールを履かせる
貶し貶されワルツを踊れば
足を挫いて共倒れ

こんな世界が嫌だと叫べば
怠惰な奴だと罵られ
綺麗な世界が欲しいと願えば
馬鹿な奴だと嗤われる

好きでもないのにしがみつき
好きでもないのに生きている
それでは道理が通らないから
それが全てじゃないんでしょうね

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