『胸が高鳴る』 115
「最近胸が動悸動悸して、頭がクラっとしちゃうんだ。
……これは恋かな?」
「 ……ねぇ大丈夫?凄く心配だわ。
病院に行った方が良いんじゃないかしら?」
「冗談だよ!
君がそんなに心配してくれるとは思わなかった。僕は優しい友人をもてて嬉しいよ……!」
「それは……あんな事言われたら誰でも心配するわよ。本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だって!
見てよ、顔色だって良いでしょ?
昨夜もよく眠れたしね!」
「あぁ、そっちじゃなくて。
あんなにつまらない冗談を、恥ずかしげも無く言えるだなんて……頭、大丈夫?」
「…………最近、僕の扱い酷くない?
胸が痛くなるんだけど気のせいかなぁ?」
「それは故意ね」
『不条理』
「世界は何時でも確率の高い方へ流れていくものだ。
そして確率の高い事柄を常識と言うでしょ?
だから本質的に考えると、この世界には不条理なんて無いのかもしれないね。
全ての出来事は起こるべくして起こった事で、そこには必ず因果関係があるんだから」
「……因果的決定論かしら?
でも仮にそれが真実だとしても、そこまで正確に未来を予測する事なんて私達には出来ないじゃない。
それなら不条理だって事実として成立する筈よ」
「まぁ、その通りだね。
そんな事が出来る奴がいるとしたら、そいつはラプラスの悪魔だろうからさ」
「……そうね」
「…………」
「……結局、何が言いたかったの?」
「……え?
別に何となく思ったことを話しただけだよ?
強いて言うなら因果的決定論とかラプラスの悪魔とか、カッコイイから使ってみたかったんだよね!」
「…………」
「( •´∀•` )ドヤァン」
「…………殺すわよ?」
「不条理ッ!!」
※不快に感じる表現がございます、予めご了承ください。
『泣かないよ』
疲れが溜まって
頭が詰まって
母が倒れて廃人に
脳静脈洞なんとやら〜
ハァーどっこいしょっ!!
入ったばかりの高校辞めて
通信制の新入生!?
傷病手当をとにかく書いて
母の職場にジャストミート!
ハァーどっこいしょっ!!
伯父を手伝い
内職しながら
レポート雑に書き上げる
高卒認定めんどくさーい!
ハァーどっこいしょっ!!
歩いて行ったら約2時間
自転車乗ったら30分
毎日行きます
お見舞いに!
ハァーどっこいしょっ!!
母の名呼んだら笑顔が咲いた
自分は周りに言いました
「お母さんが笑ったよ!」
お医者さんは言いました
「それは条件反射です」
ハァーどっこいしょっ!!
手術をするのかしないのか
なるべく早く考えよう
したら?「回復するかもね」
リスクは?「次の日死ぬかもね」
ハァーどっこいしょっ!!
どうしよう?
分かんない
手術はさせたくないけれど
自分は何にも出来やしない
ハァーどっこいしょっ!!
母の同僚は言いました
「何かあったら頼ってね」
私の伯父が言いました
「お前の事も心配だ」
お医者さんも言いました
「君は十分頑張っている」
誰もが優しい人でした
ハァーどっこいしょっ!!
まるで私は悲劇のヒロイン
それに酔ってる自分は醜悪
どうして泣ける?
何がしたい?
つまるところ私は屑で
何処まで行っても偽善者なんだ
ハァーどっこいしょっ!!
どっこいしょったらどっこいしょっ!!
『怖がり』
褒めてもらうと嬉しくなる《怖くなる》
仲良くなると楽しくなる《逃げたくなる》
優しくされると愛おしくなる《死にたくなる》
自分みたいな人間が
それを受け取るべきでは無い
自分みたいな人間は
他人に近寄るべきでは無い
寂しく思う?
気持ち悪い
辛いと思う?
烏滸がましい
自分に対して嫌悪する
秘密主義者の小心者で
プライド高い怖がりだ
『安らかな瞳』
散歩の途中に死体を見つけた。
紛うことなく人の死体だ。
今日は朝から天気が良くて、気分転換に散歩へと出掛けたのだ。
普段は散歩なんてしない、だからこそ気分転換になるだろうと思っていたのだが……。
そんな気紛れの結果が死体の第一発見者とは、慣れないことはするものではないな。
時は真昼、人通りは少ないものの陽の光が良く当たる、見晴らしのよい公園での出来事だ。
死体が階段の下に倒れているところから見て、運悪く足を踏み外しでもしたのだろう。
頭からは血が流れており、見開いた瞼から覗く瞳は既に光を失っていた。
死体を目の前にしても不思議と恐怖は感じない。
それどころか、その姿こそが自然な様にも見えてしまい、どこか座りが悪く感じる。
当たり前だが既に警察には連絡した、数分もすれば救急車と共にここへ辿り着くことだろう。
その数分間、私はここで死体と共に待つことになるのだが……。
死体の顔を覗き込む。
瞳孔が開ききったその目からは、何の感情も感じることが出来なかった。