『安らかな瞳』
散歩の途中に死体を見つけた。
紛うことなく人の死体だ。
今日は朝から天気が良くて、気分転換に散歩へと出掛けたのだ。
普段は散歩なんてしない、だからこそ気分転換になるだろうと思っていたのだが……。
そんな気紛れの結果が死体の第一発見者とは、慣れないことはするものではないな。
時は真昼、人通りは少ないものの陽の光が良く当たる、見晴らしのよい公園での出来事だ。
死体が階段の下に倒れているところから見て、運悪く足を踏み外しでもしたのだろう。
頭からは血が流れており、見開いた瞼から覗く瞳は既に光を失っていた。
死体を目の前にしても不思議と恐怖は感じない。
それどころか、その姿こそが自然な様にも見えてしまい、どこか座りが悪く感じる。
当たり前だが既に警察には連絡した、数分もすれば救急車と共にここへ辿り着くことだろう。
その数分間、私はここで死体と共に待つことになるのだが……。
死体の顔を覗き込む。
瞳孔が開ききったその目からは、何の感情も感じることが出来なかった。
3/14/2023, 12:02:09 PM