『勿忘草(わすれなぐさ)』
──勿忘草(わすれなぐさ)が咲いた
俺は善人では無い
主観的で
客観的で
普遍的な事実だ
──勿忘草(真実の愛)が散った
最小の犠牲で最大の幸福を求めた社会
その中で生きる誰が善人になり得る?
瞬間的な悲劇がなんだ
永続的な悲劇はなんだ?
本当は解っているくせに
白痴のふりをする奴等ばかり
──勿忘草(真実の友情)が散った
考える余地も無く
議論の必要も無い
馬鹿馬鹿しくて
馬鹿馬鹿しくて
ただただ
ただただ
つまらないだけの話
──勿忘草(私を忘れないで)を踏みにじった
『ブランコ』
……ブランコを見ていた
何時だってブランコは人気で
僕は乗ることが出来なかったんだ
"みんな"が交代交代しながら
楽しそうにブランコを漕いでいる
ぎぃこ、ぎぃこ、ぎぃこ
"みんな"に混ぜて貰えなかった僕は
地面に半分だけ埋まったタイヤに腰掛けて
その光景を冷めた目で見ていた
羨ましいとは言わなかった
別に乗りたくなんて無いと言った
傲慢だった
怠惰だった
狭窄だった
……ブランコを夢見ていた
何時だって愚か者は独りで
ブランコに乗ることが出来なかったんだ
『旅路の果てに』
風が吹いては髪が靡いた
道を歩いては歌を歌った
ケ・セラ・セラ
なるようになるわ
未来は誰にも分からないけど
ケ・セラ・セラ
なるようになるわ
雨が降っては髪が濡れた
傘をさしては歌を歌った
ケ・セラ・セラ
なるようになるわ
未来は誰にも分からないけど
ケ・セラ・セラ
なるようになるわ
何かに出会っては旅を続けた
何かと別れては歌を歌った
ケ・セラ・セラ
なるようになるわ
未来は誰にも分からないけど
ケ・セラ・セラ
なるようになるわ
『I LOVE…』
「I LOVE──」
……いや待てよ
「愛して──」
……もう一捻り
「月が綺麗──」
……ありがちか?
……あれはどうだろう?
……これは?
……こんな感じか?
────
──
………これだっ!
──翌日の放課後──
「 一度でも究極の美を見てしまえば、それ以外のものは相対的に格下げされてしまうものです。
貴女と会ってしまった後ならば、かの有名な文豪……夏目漱石をもってしてもこのような言葉を紡ぐことになるでしょう」
「『月が……"干からびた鏡餅"のようですね!』」
「……何言ってんの?ごめん、私バカだから意味わかんないや」
「この後バイトあるからもう行くね、ちょっと忙しくて……じゃあまた明日!」
──ガラガラ
タッタッタッタ……
「…………」
「……I LOVE YOUって言っとけば良かった」
『街へ』
様々な思いが錯綜する街
【メトロポリス東京】
誰もが己の承認欲求を満たそうとするこの群雄割拠の街に、強い思いを持った人間が一人降り立った
様々な思惑をその鍛え上げられた拳一つで解決してきた生粋の武人
強い奴はだいたい友達、頭の中まで筋肉で出来ている天下無双の女武者
心配性の親から持たされたお弁当と、お守りと、ハンカチと、ポケットティッシュと、チェーン付きのマジックテープ財布を詰め込んだリュックサックを背負い
今、この東京の中心で吠える……!
東京がなんだってんでぃ
メトロポリスだかメトロポリタンだか知らねぇが、こちとら今をときめく女の子じゃ!
美術館育ちのもやしっ子なんかにゃ負けはせんっ!
「死にてぇ奴からかかってこーいっ!」
ザワザワ……ヒソヒソ……
「……お母さん、あの人なぁーに?(超大声)」
「シッ、見ちゃいけません!(超小声)」
……ここに新たな伝説が幕を開けた
(※続きません)