『街へ』
様々な思いが錯綜する街
【メトロポリス東京】
誰もが己の承認欲求を満たそうとするこの群雄割拠の街に、強い思いを持った人間が一人降り立った
様々な思惑をその鍛え上げられた拳一つで解決してきた生粋の武人
強い奴はだいたい友達、頭の中まで筋肉で出来ている天下無双の女武者
心配性の親から持たされたお弁当と、お守りと、ハンカチと、ポケットティッシュと、チェーン付きのマジックテープ財布を詰め込んだリュックサックを背負い
今、この東京の中心で吠える……!
東京がなんだってんでぃ
メトロポリスだかメトロポリタンだか知らねぇが、こちとら今をときめく女の子じゃ!
美術館育ちのもやしっ子なんかにゃ負けはせんっ!
「死にてぇ奴からかかってこーいっ!」
ザワザワ……ヒソヒソ……
「……お母さん、あの人なぁーに?(超大声)」
「シッ、見ちゃいけません!(超小声)」
……ここに新たな伝説が幕を開けた
(※続きません)
『優しさ』
テレビをつける
賢そうな人がなんか言ってる
『外来生物をペットとして飼った人が、面倒をみきれなくなって外に逃がしたのが原因です』
「自分のペットを捨てるなんてサイテー」
チャンネルを変える
優しそうな人がなんか言ってる
『この子は幼い頃に群れからはぐれたんです、怪我が治れば自然にかえしてあげるのがこの子の為だと信じています』
「っ自然にかえっても元気でなぁ……!」
テレビを消す
何処にでもいそうな自分が画面に写ってる
「……誰か養ってくんねぇかなー」
──アーホー アーホー
烏がうるさい夕暮れ時の話である
『ミッドナイト』
やっと夜だ
やっと真夜中だ
私の時間だ
私だけの時間だ
周りには誰もいない
ここには私しかいない
私が私でいられる時間
私が解放される時間
夜が好きなんじゃない
この時間が好きなんだ
昼が嫌いなんじゃない
あの時間が嫌いなんだ
また日が昇る
また恐怖する
私の自由は……深くて暗い時間だけ
『安心と不安』
人間だれでも最後は死ぬもんですよね
そしたら記憶はどうなるんでしょう?
経験は?感情は?心は?
自分が今感じている世界はどうなるんでしょう?
自分が亡くなればそれらも無くなるのでしょうか?
仮に……仮にですよ?
もし本当にそうなのだとしたら……最強ではないですか?
どうせ最後に全て無くなるのであれば、何をしたって変わりませんよね!
…………ダメ?
そうですか、ダメですか……
じゃあもういいです(不機嫌)
『逆光』
幸せだと思ってる人は勝手にそう思っているだけ
不幸だと思ってる人も勝手にそう思っているだけ
見方を変えれば幸せにも不幸にもなれる
自分から見て不幸な人に話しかけた
「あなたは不幸な人ですね」
その人が笑いながら応えた
「あなたには負けますけどね」
…………黙らっしゃい