ノーム

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12/13/2022, 5:24:03 PM

『愛を注いで』


満たされない
満たされないのだ

渇いた
乾きに渇いた

あぁ……ああ……ああっ……ああぁっっ!
………どうしてくれようかっ!!

何故こんな思いをしなければならないっ!
何故こんなにも苦しまなければならないっ!

誰のせいだっ!
一体全体誰のせいだっっ!!

…………私のせいじゃないぞ?

私はこんなにも満たされ無いのだから
私はこんなにも渇いているのだから

人のせいにして何が悪いっ!
私はこれ迄もこれからも、この渇きが満たされない限り被害者だろう!?

満たされないのが大義名分だっ!
この渇きこそが免罪符だっ!


…………そうだろう??

12/12/2022, 7:14:20 PM

『心と心』


「アンタに私の気持ちの何が分かるのよっ……!」

「分からないよ……そんなの分かるわけ無いじゃんっ!」

「なら構わないでよっ!放っておい「でもっ!」て……」

「でもっ……貴女の気持ちを考える事ぐらいなら出来るもんっ!」
「貴女の苦しみが分かるなんて、口が裂けても言えないけど……」
「貴女の気持ちを少しでも理解しようと、考えて努力する事は出来るからっ!」
「だからっ……だから、貴女の苦しみの一つでも良いから!」
「私にも一緒に背負わせてよっ……!」

「……どうして……私なんかに構うのよ」
「アンタいったい何なのよ……」
「……ワケ分かんないわよ」

「貴女も私の気持ちが分からないんだ……」
「じゃあ……お互い様だね!」


お互いに人の心なんて読めやしない
お互いに相手の心なんて分かりっこない

しかしそれでも

そこでは確かに心と心が向かい合っていた

12/11/2022, 12:01:28 PM

『何でもないフリ』


え?
何でもないよ?

別に?
羨ましいとか思ってないし?

嫉妬?
何それ美味しいの?

私は私じゃん?
オンリーワンじゃん?

なら何にも問題ないよね?
何にもおかしくないよね?

……は?泣いてないし?
そもそも私とは関係なくない?

ねぇ?
そうだよねぇ?

だから……だからさ
もう何も聞かないでよ


……どうでもいいんだからさ

12/10/2022, 4:02:17 PM

『仲間』


得意なことなんて無いし
特殊な力も持って無いし
志しだって無いし
特別な考えがある訳でも無いし
変わった価値観も持ち合わせて無いし
有名人の知り合いも居ないし
何なら友達なんて居ないし
波乱万丈な人生でも無いし
武勇伝なんて無いし
青春なんて経験無いし
好きな事も特に無いし
恋愛もしたこと無いし

何となく生きてるだけだし……仲間にしてくれる人なんているかなぁ?


…………あ、お金も無いからね?

12/7/2022, 2:38:05 PM

『部屋の片隅で』


部屋がある

部屋の中心にはテーブルが一つあり、その上にはマグカップが二つ置かれている

どちらも中には冷めたコーヒーが半分ほど入っており、片方にはラップが掛けられている

そしてその部屋の片隅には──

────

その日は朝から母がパートへと出掛けた

その日は父の仕事は休みで、私より起きてくる時間が遅かった

その日は私も学校が休みで、母が出掛けた時の玄関の音で目が覚めた

……その日は日曜日だった

私の家族はみんなコーヒーが好きだった
だからみんな朝起きたら決まってコーヒーを飲んだし、それぞれ自分用のマグカップだってあった

その日もそうだった

私が起きてきた時には既に母の姿は無く、テーブルの上には母のマグカップが置かれていた

急いでいて飲みきれなかったのだろう、そのマグカップにはまだ半分ほどコーヒーが残っており、ラップが掛けられていた

私が自分のコーヒーを飲み終わりマグカップを洗っていると、寝室から父が起きてきてそのままトイレへと入っていった

その間に自分のマグカップを片付け終えた私は、父の分のコーヒーも用意してあげる
インスタントのコーヒーなので、粉を入れてしまえば後はお湯を入れて完成だ

父がトイレから出てきたのでマグカップにお湯を入れ、二人で他愛のない話をして暇を潰す


──♪──♪──♪

父のスマホが鳴った


電話に出てすぐに父の雰囲気が変わった

事故だとか病院だとか不穏な言葉が聞こえる中に、母の名前が時折混じる

父は私に家に居るように言いつけると、慌てた様子で家を出て行った

私はその時……何もしていなかった
何をしたらいいのか分からなかったのだ

自分のスマホを握り締めながら、ただチクタクチクタクと時計の針が進む音だけを聞いていた


──♪──♪──♪

……私のスマホが鳴った


────

部屋がある

部屋の中心にはテーブルが一つあり、その上にはマグカップが二つ置かれている

どちらも中には冷めたコーヒーが半分ほど入っており、片方にはラップが掛けられている

そしてその部屋の片隅には──


──スマホを持って茫然と立ち尽くす……私がいたのだ

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