『さよならは言わないで』
『またね』
貴女はそう言った
『うん、またね』
私はそう言った
それっきり貴女とは会えていないね
そんなに私の顔が見たくなかったの?
『私達は親友だ!』……その言葉は嘘だったの?
そんな素振りなんて少しも見せなかったじゃない
私も貴女のこと、なんでも話せる親友だと思ってたのに
勘違いしちゃったよ、恥ずかしい
『またね』
貴女はそう言って
『うん、またね』
私はそう言ったんだ
さよならは言わないで『またね』って言ったんだ
お互いに『またね』って言ったんだ……!
ねぇ、どうして相談してくれなかったの?
ねぇ、どうして私は気付かなかったの?
ねぇ、どうして私なんかが貴女の親友だったの?
……ねぇ、どうして──
もう会うことも叶わない貴女に問いかける
──私じゃ貴女の生きる理由にはなれなかったの?
『泣かないで』
……俺が悪いのか?
裏切られたのは俺なのに?
それを少し問い詰めただけで?
お前は俺が少しでも失敗すれば、何時だって嫌味たらしく責め立てたじゃないか?
俺がどれだけ謝っても冷たく睨みつけて、舌打ちをしたじゃないか?
何時も、何時も、何時も……そうだろう?
なのにどうしてお前は泣くのか?
どうして謝罪の言葉一つ言わずに、ぽろぽろぽろぽろと涙を流しながら俺を睨むのか?
どうして何も知らない筈の周りの人間は、その涙だけを見てお前に同情するのか?
……どうしてお前が被害者面をして、俺が悪者扱いされなければならないのか?
それは……そんなのは……あんまりだろう?
……泣きたいのは何時だって俺の方なのに
『冬のはじまり』
──バチィン!!
ド派手に頬を叩かれた
親父にもぶたれたことないのに……
そんなくだらない事を考えている間に、彼女は家を出ていった
……後を追う気力も湧かない
ヒリヒリとする左頬を擦りながら、洗面所まで行き鏡をみる
なんとも鮮やかな紅葉が一枚、頬に描かれていた
はぁ……なんて溜息をしつつ、風呂に入ってさっさと布団に横になる
一晩寝れば気分もマシになるだろう──
────
──翌朝、寒くて寒くて目が覚めてしまった
仕方が無いので、寝惚け眼を擦りながら洗面所へ行き顔を洗う
部屋に明かりを入れるためカーテンを開けると、外では小粒ながらも確かに雪が降っていた
……通りで寒いわけだ
温かいコーヒーでも飲もうと、電気ケトルへ向かうその顔からは……既に紅葉は無くなっていた
『終わらせないで』
……いや、こっちとしても終わらせたくは無いんですよ?
でもしゃーないんです、どうしょうもないんですって。
あのね、終わらせるんじゃあ無いんですよ……終わらさせられるんですよ。
『終わらせないで』なんてこっちに言われてもね、正直困るんですよ。
何回でも言いますけどね、しゃーないんです。
終わらせたくは無いけど、しゃーないんです。
もうね、どうしょうもないんです。
……これで、終わりなんです。
『愛情』
皆が私を責める。
私の言動には愛情がないから、愛が故に責めるらしい。
……私にも愛情があれば、他人を責めても許されるのだろうか?
分からない、私には……解らない。