愛と平和
愛に満ちてる私の世界は平和そのもの。
けど、一歩外に出たらそこに平和は無い。
桃色の愛がぎゅうぎゅうに詰まっていられるのは、閉鎖的で他人を拒んでいる世界に限られている。
そうじゃない世界って、いつもみんなが争っていたり、隙間風が吹いていたりしている。
別にそれが悪いって訳じゃない。挑戦的な人生もいいもんだと思う。
ただ、それなのに、扉で固く閉ざされた世界を見たことがある。
扉はぼろぼろで、風に吹かれたら飛んでいきそうだった。
月夜
不思議と明かりひとつない街を、私はひとり歩きまわっていた。
ふと見上げた夜空は、息を呑むほど綺麗だった。
思わずスマホを取り出して……しまった。
こんな苦しい毎日なんて、どこにも残したくないのに……
ひなまつり
今日の家には誰もいない。
日が沈み、真っ暗になったリビングで、桃をじゃくじゃくと丸かじりする。
今日は桃の節句だからだ。
私は女の子なのに、親はひな人形とかちらし寿司とか、そういうのを一切やってくれなかった。
だからこんな親不孝に育ったんだろうね、私って。
今年のひなまつりは家に私しかいないので、せっかくだから桃の節句を祝ってやろうという訳だ。
とは言っても、無論うちにひな人形などはない。料理も得意ではない。
ひなあられは友達と食べたことがあるが、あれはまずい。
というわけで、桃を食べることに決めた。
たった一つの希望
全員がたった一つの希望にすがって、見苦しいとは思わんかね。
欲望
「平和な日常をください」
少女は願った。程なくして実現した。
「素敵な人のよき伴侶になれますように」
成長した少女は願った。素敵な人に出逢った。
「どうかお金に困ることがありませんように」
更に願った。少女からは無限にお金が湧いて出てくるようになった。
純粋な欲望に塗れた少女は、慎ましくも強欲に願い続けた。
その結果、溢れ続ける慢性的な幸福に少女の感情は麻痺してしまった。
幸福を幸福と認識出来ぬまま、少女は幸福を求めて願い続ける。