枯葉
枯れ葉掃除って、何をすればいいんだろう。
そもそも、どうなったら掃除したってことになるんだろう。
おじいちゃんに押しつけられたほうきを、適当に掃きながら考える。
とりあえず、1か所にまとめてみる。
すると、もう少しで終わる、となったところにいとこが飛び込んできた。努力の結晶が一瞬で無に帰ったものだから、思わず顔をしかめてしまった。
しかし、枯れ葉吹雪でキャッキャと遊んでいるいとこを眺めていると、なんだか毒気を抜かれてしまう。
こうしてる間にも、枯れ葉は庭を独占してしまおうとひらひら舞い踊ってる。
私は肩を竦めながらも、また性懲りもなく枯れ葉を掃きはじめた。
今日にさよなら
楽しい今日も、嫌な今日も、時間は平等に今日を連れ去っていく。
ほら、今日もさよならの時間。
強い風に今日も連れ去られ、気づいた時には僅かな欠片が残るばかり。
今日の行方は、誰も知らない。
ただ、時が経つほどに褪せていくだけだ。
お気に入り
今日手に入れたお人形さんは、3つともマリオネットだったよ。
お嬢様と、おじさんと、王様。
こんなふうにお人形さんをコレクションし続けて、数えるのもバカらしくなるくらいの量を持ってる。
その中でも、あたしのお気に入りはこれ。
“❤︎My Darling❤︎”
ひとつの欠陥もない整った顔面に、艶のある髪の毛……おまけにスタイル抜群。
まさに、あたしの理想を体現したようなダーリン。
いちばんのお気に入りだから、人間みたいな体温も感じられるようにしたの。
お人形さんには少しだけ心が残ってるから、毎晩ダーリンと添い寝してると、夢を通じてダーリンの思念が伝わってくるの。
夢の中のダーリンはいつもあたしに怯えて、怨みのこもった眼でじっと見つめてる。
10年後の私から届いた手紙
人生の転機となる日、10年後の自分から手紙が届くと言われている。
それは私の元にもやってきた。
水に濡れた跡のある便箋の中身は、
‘’推しは推せる時に推せ‘’
と書いてあるノートの切れ端だけだった。
待ってて
「私はここにいるよ。待ってるから、早くおいで」
憧れのトップアイドルは、私にそう言った。
私は努力の末トップアイドルの座に迫り、手を伸ばした。
かつての憧れを押しのけて頂上から見下ろす景色は、驚く程に色褪せている。