その日その日を懸命に生きていたあの日々
溌剌とした黄金の日々
順々に思い返そうとしてみても、
空白だらけ
あの時の辛さもあの時の幸せも
あの時、私は何を考え
何をしていたのか
タイムマシーンがあったなら
いいや、よそう
考えたらキリがない
今を懸命に生きるという言い訳をして、私は眠った。
#タイムマシーン
あとはなんにも考えない
踊り狂えよ
水曜の夜
高い高い山に挟まれた、広い盆地。
盆地には街があり、そのはずれに私の家がある。
「空の上には、なにがあるの?」
お母さんに尋ねた。
お母さんは、必ずこういう。
「おきてを教えたでしょう。」
この地域に昔から伝わるおきて、それは、決して山よりも高いところに行ってしまわないこと。
「目ん玉飛び出して、死んじゃうらしいわ。」
お母さんは不快そうに言う。
「上は街の明かりが届かない、暗くて厚いカーテンに覆われてるでしょう?だれが行きたいと思うの?」
おつかいの道中、ふと考える。
空には何がある?永遠と続くような暗闇の先に、何かがあるの?ほんとに、世界はこれだけなの?
よく知っているこの街が、世界の一番底だとしたら、この世界はなんなの?
私、このままこの街で、死んでいくの?
色彩があるはずがない空を見上げる。一筋の光が見えた気がした。
私はヒレを懸命に動かした。水の重さが私を地上に戻そうとする。でもぐんぐんと浮いていく私の身体。
目ん玉飛び出しそうになったら、やーめよ。
"海の底"
一枚の年賀状。
今年も、来た。来てくれた。
花に囲まれて笑う単純な馬のイラスト。
もちろん目が行くのは、相変わらずの拙い字。
「今年もよろしく」
変なふうに口角が上がる。
流れ作業、ね。
どんなに熟考したことか。
毎年思わされる自分。
でも、これ以外の繋がりなんてないんだよ。
遠く離れた君がどうしてるか。
思いを馳せずにいられないよ。
ーー今日だけだけどね。
君に会いたくて。
初恋の人に彼女ができた日、ふと手に取った日記帳。こんなところにあったんだ、という思いと共に、あの日の頬の熱さが蘇る。ヒロインはおろか、負けヒロインですらないのに、この複雑な気持ちを書き留めておくべきだと思ってたオメデタイあたし。
「ばか、ばか。私の気持ちも知らないで、あの人はきっと笑ってる。私が見たことない顔で。」
なんだこれ。思った以上に詩的な。ズボラなあたしとしては意外にも、翌日の筆跡が裏から透けて見えるじゃないか。小さな字で、こう書いてある。
「でも、失って初めて気づいた。好きだった。サヨナラ、私の恋。」
絶句。正直なんだ。意外と。
あたしは日記帳を棚の元の位置にしまって、ルーズリーフを取り出す。ーー天気はくもり。