高い高い山に挟まれた、広い盆地。
盆地には街があり、そのはずれに私の家がある。
「空の上には、なにがあるの?」
お母さんに尋ねた。
お母さんは、必ずこういう。
「おきてを教えたでしょう。」
この地域に昔から伝わるおきて、それは、決して山よりも高いところに行ってしまわないこと。
「目ん玉飛び出して、死んじゃうらしいわ。」
お母さんは不快そうに言う。
「上は街の明かりが届かない、暗くて厚いカーテンに覆われてるでしょう?だれが行きたいと思うの?」
おつかいの道中、ふと考える。
空には何がある?永遠と続くような暗闇の先に、何かがあるの?ほんとに、世界はこれだけなの?
よく知っているこの街が、世界の一番底だとしたら、この世界はなんなの?
私、このままこの街で、死んでいくの?
色彩があるはずがない空を見上げる。一筋の光が見えた気がした。
私はヒレを懸命に動かした。水の重さが私を地上に戻そうとする。でもぐんぐんと浮いていく私の身体。
目ん玉飛び出しそうになったら、やーめよ。
"海の底"
1/20/2026, 12:03:01 PM