8/8/2024, 2:32:35 PM
蝶よ花よと育てられたいのちだった。ぬくい綿の中で育てられた、傷ひとつない無垢な魂だった。
その無垢さは悪意より深くひとを傷つけ、そのくせ人一倍よわく、やわく、もろかった。
ねぇ、きみのそれ、なぁに?
ゆるゆると笑いながら問うたそれは眩しかった。己が悪になり得るなど思いつきもしないだろうそれは、美しい笑顔を私にも向けた。
さて、大切にたいせつに育てたものが鋭い刃を持って己を襲ったとき、貴方ならどうするだろうか。
私は?
No.8【蝶よ花よ】
8/7/2024, 4:36:53 PM
最初から全て決まっていた。
私たちは、はじめからこうなる運命だった。自らの手でつかんだ幸福も、握らされていた銃口も、今となっては1フレームにおさまってしまうだけの過去だった。
貴方の腕の中は、そらにゆるい曲線を描きだすみどりの丘陵のにおい。
貴方のてのひらは、ぎこちない祈りを神におくった無垢な少女のたましいのかたち。
手繰った未来が光を反射しないことに気づいてしまったとき、貴方はやわらかくわらって、とおくないて。
No.7【最初から決まってた】
8/5/2024, 2:17:45 PM
この街に鐘の音がひびくとき、きみは呼吸をひとつ、笑って。
No.6【鐘の音】
8/2/2024, 12:39:33 PM
病室の窓からみえる白木蓮は今年も、高潔な顔で立ち続けている。
No.5【病室】
8/2/2024, 9:58:57 AM
明日、もし晴れたら、ピクニックに行こう。ね?
君はお気に入りのギンガムチェックのワンピースを見せびらかしながら、楽しそうに言った。
彼女の小麦色の肌には、薄い黄色のギンガムチェックワンピースがよく映えた。きれいな笑顔は真っ白で、ももいろ。麦の香る不格好な帽子も、しゃらり優しい音を立てる草花も、全てが君のためにあるみたいだった。
No.4【明日、もし晴れたら】