この街に鐘の音がひびくとき、きみは呼吸をひとつ、笑って。
No.6【鐘の音】
病室の窓からみえる白木蓮は今年も、高潔な顔で立ち続けている。
No.5【病室】
明日、もし晴れたら、ピクニックに行こう。ね?
君はお気に入りのギンガムチェックのワンピースを見せびらかしながら、楽しそうに言った。
彼女の小麦色の肌には、薄い黄色のギンガムチェックワンピースがよく映えた。きれいな笑顔は真っ白で、ももいろ。麦の香る不格好な帽子も、しゃらり優しい音を立てる草花も、全てが君のためにあるみたいだった。
No.4【明日、もし晴れたら】
誰かのためになるならば、の後に続くとすると、「この命も惜しくない」だとか「どんな努力もしてみせる」といった自己犠牲の文になるだろうか。
自己犠牲なんて高尚な考えは私の脳みそには無いし、あったとしてそのこころは放っておけば私自身に害が及ぶと思ったから、とかそんなんだろう。それはもう自己犠牲ではないし、世間の方々はよくもそんなに世界に献身的になれるものだと感心する。そもそも「誰かのため」を語るものが“本当に”それを想って自己犠牲をはらっているのか甚だ疑問である。
結局のところ全てエゴなのだ、きっと。
なんて厨二病くさく語ってみたけれど、多分いつだってポンコツな私は私のことで精一杯だし、世界だってそうに決まってる。そういうことにしておいてほしい。
No.3【誰かのためになるならば】
ねぇ、空のかたちって人によって違うんだって、知ってた?小さい頃はすごく広くてぼやぼやしてるんだけど、大人になるとみーんな、小さくてかちかちで、ほとんどなんにも見えなくになっちゃうんだって。
僕の空はね、きっとすごくきっちりした四角いやつ。別に特別狭かないんだけど、まんまるの端っこがよっつ、削れて見えてないんだよ。
君のは?僕が思うに君のやつ、きっとまんまるで、ふわふわで、ぺかぺかで、つるつるで。きれいなんでしょう?どんなふうにでも、なれるんでしょう?
あの時君が放った願いは、鳥かごのかたちをぐにゃり、曲げて。
No.2【鳥かご】