子供の頃に何回か
家族で楽しんだ
月見の宴
家のベランダに
テーブルを出し
ススキとお団子を飾り
皆で眺めた仲秋の名月
父は俳句
母は短歌を詠み
姉とわたしは
お団子を食べるのに忙しくて
まさに 月より団子…
お月さまを好きになったのは
絶対に両親の影響だと
ススキを見る度に
遠い日を
懷かしく思うわたしです
# ススキ (327)
いつも脳裏にあるのは
あなたと過ごした
いくつもの場面
それは
その時々の
あなたの言葉と共にある
心ときめいたシーン
嬉しさが溢れたシーン
喜びに涙したシーン
何気ない日常の中のシーン
そして最後の
悲しみのシーン
どれほど歳月が流れても
脳裏に焼き付いた残像は
消えることはなくて
あなたを亡くした
悲しみだけが
諦めの中で
静かに
色を変えていく
# 脳裏 (326)
縁と言うには
あまりに強く
小指に絡んだ
赤い糸
来世でも
一緒にと
あなたとわたしの
無言の約束
# あなたとわたし (325)
音もなく降る細い雨は
まるで
あなたのようです
緩やかに
わたしの心を潤し
満たし
穏やかで
優しい気持ちにさせてくれる…
きっと今日は
柔らかい雨になって
逢いにきてくれたのですね
# 柔らかい雨 (324)
せいたかあわだち草の
花粉をふりまいて
風は
田園を黄金色に染めました
この絵の具が
次の風に吹きはがされる頃
秋は
いよいよ終着駅へ
秋の終点が
冬の始発駅となるのなら
あなたとの恋の終点は
想い出の始発駅
サヨナラを合図に
発車のベルが鳴りひびけば
わたしの心も
蒼白な冬へ
ひとり
旅立ちます
☆ 旅立ち (323)