君 不在
窓越しに見える
月も
今夜は隠れて
泣くだろう
# 窓越しに見えるのは (197)
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月が輝く夜には
海の水を
透明なガラスの
小さな瓶に詰めて
枕元に置いて
眠りましょう
その夜
わたしは青い魚になり
大海原を渡って
あなたのもとへ
行けるでしょう
✩ 幻想 (196)
あなたは ひとりで
先に
逝ってしまったけれど
わたしに
あなたへの想いがある限り
あなたと結んだ 赤い糸は
切れたりはしないから
わたしが逝くまで
どうぞ其処で
待っていて
# 赤い糸 (195)
こころが
動かなくなって
もうどれくらいになるだろう
感動や感激
ときめきなどを
どこに置き忘れたのだろう
体調不良で
微熱が
倦怠感と無気力を誘う
こんなにも
不甲斐ないわたしに
あなたは
きっと 空の上で
苦笑いをしてるよね…
✩ 弱音 (194)
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ぐんぐんと
大きく
力強く
逞しくなる入道雲に
今日の気持ちは
疎ましさと
少しの羨望
#入道雲 (193)
泣くことも
声をたてて笑うことも
怒ることも
苛立つこともなく
なにもかもが
どうでもいい
動かない
動けない
動こうとしない
動きたくない
不変の安心と
不変の不安との
絶妙なバランスを
保ちながら
生きていて
死んでいる
今年も
やっぱり
夏は
きらい
# 夏 (192)
ここではないどこかに行けるならば
あなたの傍がいい
天国だろうと地獄だろうと
またあなたに会えるなら
# ここではないどこか (191)
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二人並んで腰掛けて
同じ時間 同じ景色を眺めても
背中合わせの 心と心
さびしさだけが とりまいて
話す言葉も とぎれがち
口先だけの話です
明日になれば
忘れてしまう会話です
作り笑いの虚ろさに
うろたえながらも
それでもやっぱり 笑い合い…
心の中に しみこんで
しみこんでゆくのは
そらぞらしさの むなしさばかり
さびしいなんて そんなこと
はじめから
分かっていたことでした
# 君と最後に会った日 (190)