月明かりもない
真夜中に
あなたとの想い出を
心の奥から
そっと掬い上げる
想い出は
少しも色褪せることなく
きらきらと輝いている
思わず
涙が零れ落ち
涙で濡れた想い出は
さらに輝きを増して
深く刻んだ傷さえも
歪ませながら
照らし出す…
想い出を連れて
夜は
音もなく
更けていく
✩ 真夜中 (143)
星の瞬きのように
密やかに
歌いましょう
届かないと
知ってはいても
それでもいつかはと
儚い望みをかけて
あなたの想いに
祈りの歌を
子守唄を
# 星の瞬きのように (142)
あなたが
両手を広げ
わたしに
手招きをした時
わたしは
小石に躓き
動けなかった
あれほどまでに
あなたの傍に
行くことを
切望していたのに
たったひとつの
小石のために
動けずにいた
いま
わたしたちは
それぞれに
違う場所で
違う想いで
諦めと
悲しみの
溜め息をつく
# 後悔 (141)
あなたが降らせる
雨ならば
心の底まで
濡れましょう
あなたが降らせる
雪ならば
想い出とともに
凍えましょう
あなたが吹かせる
風ならば
見えなくなるほど
遠くまで
飛ばされても
ゆきましょう
それでも
それでも
あなたを想う
ことだけは
どうすることも
出来なくて
# 風に身をまかせ (140)
亡くしかけている
心のひとかけらを
手放すまいと
懸命に虚空を摑む
想いは
すでに想いではなく
取り残された
ただの骸でしかない
軋んだ音をたてながら
すれちがって行くのは
声になれなかった
言葉たち
たとえ
あなたの腕の中に居たとしても
温もりが届いてこない寂しさは
苛立ちを突き抜けて
諦めに変わるから
大人になるのを邪魔をする
背中の羽根を
一本ずつ抜きながら
流れるその血で
残りの愛を描く
✩ 残りの愛 (139)