夕づつ

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5/12/2023, 11:52:14 AM



  扉の鍵を失ったのは 
  あなたでも
  わたしでもない


  鍵は
  初めから
  なかった


  開かない扉の前で

  あの頃のわたしたちは
  ただ虚しく
  同じ夢ばかりを見ていた
  


  扉が開かなかったのは
  二人の
  開ける努力と
  勇気が
  足りなかっただけ



  だから今
  思い出の部屋の扉は
  開けても

  二人が立ちすくんだ
  あの
  一番奥の扉の向こうに

  どんな「未来」が
  待っていたのか

  知る由もない…





            ✩ 扉 (138)


5/11/2023, 12:19:44 PM



  あなたの刃が
  わたしの心を
  突き抜けるほど  
  深く
  斬りつけても

  あなたへの
  わたしの想いは

  まるで
  零れた水銀のように
  再び
  丸く
  元の形に戻ろうとする


  涸れ果てるまで
  傷口に注いだ涙は

  虚しさだけを残して
  鮮やかに
  乾き始める

  

  叫ぶほどの愛は
  とうの昔に
  終わったけれど

  あなたへの想いは
  まだ
  眠ることが
  出来ずにいる




          # 愛を叫ぶ (137)




  

5/10/2023, 12:22:24 PM

 
 
  不意に現れて
  ほんの一瞬だけ
  わたしの肩で
  羽を休めた
  モンシロチョウ


  捕まえようとした指先を
  するりと抜けて
  あっという間に
  ひらひらと何処かへ

 

  あのひとみたいだと
  思うココロに
  苦笑い




        # モンシロチョウ (136)

   
   ✢ ✢ ✢ ✢ ✢ ✢ 




  ぼくのこころを
  がんじがらめにする
  きみの
  そのやさしさが

  ときどき
  ぼくを
  ふあんにさせる



  きみがいないせかいでは
  もう
  いきていけなくなりそうで




           ✩ ふあん (135)


5/9/2023, 11:30:01 AM


  
  夜の深さに
  独り沈む時


  封印したはずの
  あなたへの想いは
  涙とともに
  熱く溢れ出し

  煌めいていた
  ふたりの日々が
  寒い心に
  鮮やかによみがえる




  どんなに
  時が流れても

  あなたを失った
  哀しみは

  しんしんと

  雪のように
  降ってくる






  # 忘れられない、いつまでも (134)

5/8/2023, 12:07:58 PM



  わたしは
  あなたが泣いたのを
  知らなかった

  
  別れた日に
  荒れて 荒れて
  酔いつぶれるまで呑んで
  涙を流したという

  その事実を
  どう受けとめれば
  いいのだろう


  一年後の
  今になって

  悲しみが
  わたしだけのものでは
  なかったことに
  気付いても

  もう
  あの日の二人に
  戻れるはずもないというのに

  
  わたしの心は
  あなたが泣いた夜に
  戻りたがっている…




           # 一年後 (133)


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