NoName

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5/19/2022, 3:39:57 PM

予兆は有った。でも、まだ。まだ大丈夫。元気になって帰ってくると思っていた。思いたかった。

熱が下がったらそのまま逝ってしまうかもしれません。そう、先生に言われた。だから覚悟していてくださいと。

夕方に集中治療室で面会をした。熱が少し下がりかけて、ドロンとしていた瞳に少しだけ元気が戻っていて。

あぁ、戻って来れる。帰ってきてくれる。そう、思った。面会に行ったら、嬉しそうに家族を見て一言ずつ話してくれた。もう、手しか動けないのに体を持ち上げて。安心した。

だからまた明日ねって別れた。

早朝だ。

未だ陽も上がらない時間に電話が鳴った。

だめだったんだ。ダメだったんだ。

病院から連れて一緒に寝て過ごしてあげれば良かった。
そんな悔しさでいっぱいだった。

病院に着いたら先生が必死に、延命しようと心臓マッサージをしていた。

小さな、小さな体がわずかな時間でも家族に見送ってもらえるように。必死に鼓動をうっていた。待っていてくれた。

誰が先とも言わず家族みんなが名前を呼んだ。

呼んだ。

逝かないで。

帰ってきて。

お家に帰ろう。

心肺停止の音が鳴っても先生は延命のマッサージをしてくれた。家族みんなが泣いていた。

逝かないでから、

頑張ったね。

偉いね。

ありがとうねに変わって別れを告げた。

突然ではないと人は言うかもしれない。

でも、どんなに覚悟の時間があっても。
別れは突然訪れたように感じる。