Morita

Open App
1/23/2025, 10:08:58 AM

「作りすぎちゃったんで、どうぞ」

眉尻を下げて、申し訳なさそうな顔で差し出された特大から揚げ。でかすぎて台湾の、ほーだいじーぱいぱいみたいな名前の鳥の揚げ物みたいになっている。弁当箱に入っていたとは思えないサイズ。重さにお弁当ピックがしなっている。

おれはごくりと唾を飲む。

「あ、もしお腹いっぱいだったら無理しないで下さいね」

お腹はいっぱいである。でも無理したい。絶対美味しい。黄金色の衣が輝いている。これに衣替えしたい。でも駄目だ。おれは昨日ライザップに入会したんだ。ちょこっとじゃない方、ガチザップの。こんなのに衣替えしたら決意が揺らいでしまう。黒背景の暗めのスポットライトでうつむいて台の上で回り続けないといけなくなる。

追い討ちをかけるように、彼女はから揚げをずいと寄せてきた。めっちゃ良い匂い。スパイスの。

「さすがに作りすぎじゃない?」

昨日ダイエット始めた話をしたはずなんだけど。
故意だと思う。故意だよこれは。

彼女は声をひそめて、

「作りすぎちゃえ、と思って」

なんてことを。

「いやいやいや」
「やめておきます?」

じっと見つめてくる目には、期待が込められていて。
おれは観念して、から揚げの刺さったピックを受け取る。おっもいなこれ。

一口かじると、冷めているのに揚げたてみたいだ。カリカリの衣、ふわふわの鶏肉。

「うっま……」
「痩せなくて良いですよ」

彼女はにっこり笑う。


【お題:あなたへの贈り物】

1/20/2025, 11:30:47 AM

「明日なんか来なければいい」

机に突っ伏して君がうめく。カフェインドリンクの空き缶が机から転がり落ちて空虚な音を立てる。

「明日は来るよ。っていうかもう今日だよ」

時計は0時を過ぎている。

「うわああ」

「なんで今までやってなかったのよ」
「だって、だって」

パソコンのテキストメモは真っ白。いや、辛うじてレポートのタイトルと名前は書いてある。
これを今日の2限、10:45までに

【お題:明日に向かって歩く、でも】

1/20/2025, 7:42:33 AM

何も思いつかないんたが。どうしよう。

「ただひとり」という言い方をするのは、例えば「僕が愛したのはこの世界でただひとり」とか「この試験に合格したのは〇〇さんただひとり」とか、要はある厳しい条件のもとで選ばれた一人を指すものであって、あんまりそういうの縁がなかったのかも。

「君へ」ということは何か伝えることがあるのだろうけど、特にそういう選ばれた人に言いたいことはないしなあ。

えーと。頑張ってください。
ごめん。何も思いつかない。

【お題:ただひとりの君へ】

1/11/2025, 10:39:25 AM




【お題:あたたかいね】

1/9/2025, 1:50:23 PM

「生まれ変わりってあるのかな」

目がくらむほどまぶしい舞台。その中央にはグランドピアノが一台。白と黒の鍵盤は冷たく艶やかに光をはじいている。

5000人の観客が、息を潜めてサヤカが出てくるのを待っている。稀有の才能をもったピアニストとして一躍有名になった彼女を。

「何してるの。早く!」

マネージャーが急きたてる。しかしサヤカは動かず、私の目をじっと見つめて、

「私ね、前世はあなたと家族だった気がするの。恋人だったかもしれないね。」






【お題:星のかけら】

Next