通り雨だ。近くにあった古い店の軒先に駆け込む。
空は明るい。でも大雨。傘は持ってきていない。どうしよう。
どうもしなくていいや。急に何もかもどうでもよくなってしまって、地べたにそのまま座り込む。おしりが冷えるけど、どうだっていい。私は疲れている。
学校行かなくてもいいや。
遅刻しそうになって、急いで行こうとしたらこの雨だ。行くなってことかも。なんて都合の良いように解釈する。どうせ私一人いなくたって困る人はいない。給食のコロッケが余るからむしろ喜ばれるかも。
なんでこう、毎日毎日さあ、重い体を引きずってクラス内で逃げられない交友関係の中で愛想笑いして相手の話を盛り上げてさあ、やりたくもないこと、食べたくもないもの、そんなものに囲まれてさあ。
やんなっちゃったよ。
急に目の前がかげる。顔を上げれば、こちらに傘を差し掛けてくる仏頂面。
「遅刻するよ」
流行遅れのぱっつんストレートヘアに、色気のない黒縁メガネ。スカートは膝下の。うちのクラスの学級委員。
「いいよもう、どうせ遅刻だし」
「良くないから」
飾り気のない無骨なビニール傘を差し出される。せっかくサボる気になってたのにさ。
「学級委員だから仕方なく探しにきたんでしょ。ホントは私のことなんかどうでもいいくせにさ」
あーあ、別にこんなこと言ったって何も変わりはしないのに。
彼女はぽつりとこう言った。
「今日の給食、牛肉コロッケだけど」
「知ってる」
「あれ、美味しいよ」
変わり者の仏頂面は、いたって真面目な顔でそんなことを言う。
「知ってるわ、そんなん」
まったく調子が狂う。私はこれ見よがしにため息をついてみせて、それから「よいしょ」と立ち上がる。
雨は小降りになっている。
「ではいきますね」
扉がしめられ、小部屋には私一人になった。
【お題:心の灯火】
やっと描きあげた大作だけど、誇らしさはなかった。
壁のように立ちはだかるキャンバスに、ひたすらに絵の具を重ねた。目の前にある透き通ったそれを、自分の感じたままに、
【お題:誇らしさ】
「パパあそんでー」
「でー」
両側から頬をつねられる。
【お題:だから、一人でいたい。】
「お前なあ、いい加減にしろよ」
ある夏の朝、神様が舞い降りてきて、こう言った。
【お題:神様が舞い降りてきて、こう言った】