♯ この世界には愛が存在します。
私と彼は愛の世界にいた。
いつだって2人きりで幸せに包まれた愛の世界だ。
ペアルックの服もキーホルダーも
全部2人の自己満でしかないけど
そんな些細なことで愛を確かめあって笑った。
確かめなくてもそこにずっと愛はあるのにおかしな話だ。
この世界には愛を初めになんだってある。
週末に行く遊園地はメルヘンな音楽で2人を躍らせて
その途中にあるレストランは2人の頬を落っことして。
ほらなんだってあるでしょ?
ただ一つだけ不可解なことがあった。
それは私たちの家の中に時々私の知らないアクセサリーとかおしゃれなコスメが落ちてることだ。
彼に聞いても知らないそうだ。
ここには2人きりだから頼れる人もいない。
だから彼を信じるしか術は無いのだけど
疑問は残ってしまうものだ。
ねぇそこに居たのは本当にふたりだった?
きっとあの時まだ夏は涼しげだったんだ。
多分涼やかな昼下がりに見たんだよ。
青い空の下で、蝉の声を聴きながら
跡地に虚しく生い茂っている夏草を
だからこんなにも美しくて儚い歌が詠まれたんだ。
けどさ、この猛暑の中で同じ儚さを見出すことは、もう
生い茂ったはずの夏草もまた虚しいんだ。
海にプールにBBQ
煌びやかなのはいいんだけど
ただ大量の宿題がここにある
素足で歩いて痛かったからみんな靴を履いてるんでしょ?
ありのままでとか保険をかけるなだとか表面やめろだとか
いくら綺麗事をなぞったところで、
結局、内側から腐ってるだけなんだって。腐らせてるんだって
壊してるんだって、苦しめてるんだって、殺してるんだって
なんで気づけないかな。
素足のままで?ふざけるな
♯25 はじめまして、小さな街と誰かと誰かと無口な誰かと
見知らぬ街に訪れた。
村人Aは「おかえり」と言った。
村人Bは「久しぶり」と言った。
選択肢は無言かもう1つ。
後者を選んで僕は「はじめまして」と言った。
村人AもBも後ろで黙てたCも変な顔して「そうだね」と言った。
どこに迎えばいいのかクエストが出なかったから
勇気をだして村人Cに聞いてみたら俯いて少ししたあと
こっちを見てどこかに行くから後を着いて行ってみた。
名前を聞いてもどこに行ってるか聞いても返答はなくて
ただまっすぐ、ちょっと曲がって、そのまままっすぐ。
無言のまま小さな家に着いた。
新しいクエストはまだ出ない。
村人Cは家の前で止まったままだから
1人で玄関の扉を開けた。家の匂いがした。
家の匂いって?なんだろ。それ
しゃがんで靴を揃えたら立ちくらみがして、
ぐるぐる回った視界のまま横の壁に手をついた。
壁には地面と平行な5センチぐらいの線が二、三本。
横の棚には仲睦まじい家族写真?
4人の。家族写真?誰の?
家を探索したらボロボロの箱を見つけた。
誰かの名前であっただろう拙すぎる暗号は頭の中も絡まって
なんか、いや、、あぁ頭が痛いや。気持ち悪い。気持ち悪い。
まだ次のクエストは出ない。
ただ、窓の外でうずくまって泣いている村人Cを慰めなくちゃ