陽月 火鎌

Open App
12/14/2024, 8:20:28 AM

「……辞めたいなぁ、この仕事」

いやだってね、”アイ”って名前の液体をガラス瓶に注ぐ仕事ダヨ?なんかバカが速攻で考えたみたいなクソな仕事なんだけど、マジで辞めたい。

『無哀 届歌(むあい とどか)、本日のノルマまで37本です。いつも通りの進捗ですね、無駄口を叩く暇があったら手を動かしなさい』

そして辞めたい理由の一番はこのクソ上司だ。会社全体がこんなシステムだから、この会社辞めたい。

『C班への業務連絡です。本日のC班のノルマ達成者は1人です。まだまだですねぇ……では、本日のC班の終業時間は3時にしましょうか』

………えっ?!

『冗談です。17時にノルマが終わっていれば、本日は帰宅してもらって大丈夫ですよ』

⸺珍しっ!?!?!?

 ◆◇◆◇◆

「今日のカレーは特別ウマイな。隠し味?」
「あら、気付いたのね。そうなの、”アイ”を注いだの♪」
「へぇ…ありがと」
「お礼はいらないよ〜!」

【需要はあるんです、えぇ】

12/2/2024, 10:02:34 AM

右を向くと、白。
左を向くと、黒。
正面を向くと、黒と白の真っ直ぐな境界線⸺と、このほぼ何もない空間に似つかわしくない、木製の看板。

『     光と闇
  君はどちらを選択する? 』

⸺転生オプションを選べたから、ここに来たんだが…これ人によって解釈変わると思うのだが???

「けどま、分かりきったことだ。オレはどっちつかずの中立で平々凡々が良いからな……今こうやって立っている場所、オレはこの選択をする」

突然、上から看板が降ってきて、新しいメッセージが届く。
⸺えっ、いや…上からって、運悪かったら突き刺さるんじゃないか……?

『    なるほど
   なら君は、光と闇
   相反する二つの力を
    扱うといいさ    』

⸺オレは転生したあと、この出来事を深く後悔するのだが、それはまた別の話である。

【狭間の記憶】

12/1/2024, 2:10:09 AM

≫見捨てられた家のポストを開けてみた。
 どうやら中には、一通だけ封筒が入っ
 ている。
≫どうやら一度開けてからテープで中を
 閉じたようだ。

≫テープを剥がして中を見てみますか?
  ▷はい  いいえ

≫中に入っていたのは、手紙が数枚と一
 枚の写真、そして銀色の絵の具で色付
 けされた木彫りの板だった。


≫何度も消した跡がある
 手紙を読んでみますか?
  ▷はい  いいえ

「■■へ!
 オレたちはどんなにとおくはなれても
 えいえんにナカマだ!
 そのことわすれてなくのはやめろよ!
              まきより」

≫まだ二枚手紙が残っている。
 柑橘の匂いがする読んでみますか?
  ▷はい  いいえ

「ル■へ
 ボクらはいつもつながっている。
 だからルカは、ぜったいにひとりぼっ
 ちじゃないよ。

 マキもハナねぇも、もちろんボクも
 ■カのことをしんぱいしてる。
 だから泣かないでほしいんだ。ルカ。
             ハズキより」

≫まだ一枚手紙が残っている。
 濡れた跡が残っている
 手紙を読みますか? 
   はい ▶はハ刃イいヰ


「■■カちゃんへ
 大丈夫ですか?
 最近、あまり水晶で連絡がつかないの
 で手紙を送りました。
 マキシズとミキハズキに手紙を書いて
 いるところを見られたので、二人の手
 紙も同封しました。
 返信は無理にしなくても大丈夫です。

 私はただ、■ル■ちゃんが泣きそうに
 なったとき、そっとそばに寄り添って
 ミ■■ちゃんの苦しさが、ちょっとで
 も無くなればいいと思って、手紙を出
 しました。
 無理をせず、ゆっくりと外の世界に慣
 れて、いつかの私達が願った夢を叶え
 てくれると、嬉しいです。
           ハナミズキより」

≫どの手紙も送り先の人物の名前が塗り
 潰されているようだ。…なぜだろう?

『  ミタナ…?オマエ、ミタナ?  』

⸺⸺⸺ゲームが落ちてしまった。
丁度いい、今日はもう終わりにしよう。

     *

「な、何なんだよ…お前…」
『私ダヨ?泣カナイデ………ミルカニナロウ?ミルカハ私デ、次ハ貴方ナノ。泣カナイデ、次ニ手紙ヲ開ケタ誰カニ、ミルカヲ引キ継ゲバ、貴方ハ戻レルカラネ。ダカラ……変ワロウネ』
「……ぁ、あぁ…やめろ、来るなぁ!来るな!!!………⸺ア、アァ…』
『ゴメンね………⸺戻れ、た…よかった!家に帰れるんだ!!!」

【繰り返されるイベント】

11/25/2024, 12:47:21 PM

病弱で、食事をあまり食べなかった娘。
ある日娘はこう言った。

「ねぇ、お父様。私ね、この世から開放されるときは、太陽の下がいいわ。⸺私の最期の願い、叶えてくれる?」

娘の願いの殆どを叶えてやれなかった私は、彼女の最期の望みを……叶えることにした。
娘を背負い、日傘を使い、太陽がよく見える花畑へ向かう。向かう途中に陽の光が当たらぬよう、気をつけながら。そして⸺

 ◆◇◆◇◆

「⸺セリカ、ついたぞ」
「んぅ………ぁ。ここ、きれい」
「そうだろう。私も、ここの景色は気に入っていてな。…セシリアの墓があるのも、この花畑だ」
「セシリア…お母様の、ですか。……死んだら、怒られてしまいそうですね」
「あぁ…そうだな」

娘にまだ、陽の光が当たらぬよう、ゆっくりと地面へと降ろす。自然を感じるのが楽しいのか、花を手折って匂いを嗅いでいる。⸺………っ。

「セリカ…そろそろ、日傘を閉じるぞ」
「⸺あっ……そうですね、お願いします。お父様」

日傘を閉じる。
その直後、身体全体に痺れるような痛みが走り、身体全体が沸騰するような熱さに襲われる。何度も経験した通り、身体のあちこちから煙が噴き出し、肉が焼けている臭いがする。

そしてそれは、娘も同じだった。
いや、娘からしたら、父親が同じ痛みを受けていることは、おかしなことだったのだろう。
私も陽の光を浴びていることに驚いた娘は、慌てるように言葉を紡ぐ。

「お…お父様!?お父様は日傘の下にいらしても⸺」
「何を言う。私がセリカと同じ痛みを受けない訳がない」
「なっ…ど、どうして!?」

私の返答を聞いて娘は、訳がわからないというような顔をする。⸺顔が歪むほどの痛みが続いているというのに……セシリアも、表情が豊かだったな。

「悲しいことに、私の身体は陽の光を浴びても消滅することは無い。おそらく、私の血は先祖に近いのだろう。だからこれは、私の推測になるが…私が死を迎える時は、先祖に習って、銀の剣を携えた英雄に殺された時だろう」
「………お父様は、死にたいのですか?」
「ふふっ…セリカ、私はね……セシリアに会う前から、死を待ち望んでいるのだよ」

私の答えを聞き、少しの間口を閉じていた娘は、何か悩んだような表情から、何かを決めたような表情に変わり、私への、最期の言葉を告げる。

「お父様。死んだ後、また会える保証なんてありません。ですから、しっかりとお別れを言います」
「⸺!…そう、か。わかったよ、セリカ。……さよならだ、セリカ」
「えぇ。……さようなら、お父様」

そうして別れを告げた娘の身体はすべて…⸺蒸発した。
骨すら残っておらず、この場に残されていたのは、娘が最期に身に着けていた衣服やアクセサリーの類いだけだった。

⸺その後、どのようにして城に帰ったのか、私は覚えていない。

 ◆◆◆◆◆

「お前が持ってきた、最低最悪と言われた、悪名高き吸血鬼の日記だが……ほぼほぼゴミだったぞ。魔法の記録が一つも無かった」
「えぇぇー……マジですか?それ。オレ結構苦労したんすよ?勇者サマに同行して、勇者サマ一行が吸血鬼と戦闘中にこっそり抜け出して、吸血鬼の私室を荒らして…それなのに、強力な魔法がひとっつも無いとか、オレ働き損じゃないっスか!」
「うるさいぞシュレン。貴様、戻ってきてから更に騒々しさが増したのではないか?」
「うぇ!?…そッスかね?」
「うむ。……貴様をクビにしても、人材は足りてるぞ?」
「ひぇっ!?ちょっ、真面目に!真面目に働くので解雇だけはマジ勘弁してください!!!⸺あっ!オレ、本部の掃除手伝います!今のオレができる仕事をやりますんで、では失礼します!!!」
「………口を挟む間も無く、逃げられてしまったな。まぁいいか、どうせシュレンは捨て駒に近い。⸺ククッ、我らが闇ギルドがこの国を制することは、闇ギルド設立時から決まっている運命なのだよ…フハハハ!」

【誰かの大事は誰かにとってはゴミ同然】



おまけ

「よぉし!ここの掃除完了!それじゃ、次の場所を…⸺あり?なんッスかね、この穴ぁぁぁ!?!?!?」
【とある男、異世界へと呼び寄せられる。しかし、最後はきっと、妖に……。】

11/24/2024, 4:51:30 AM

⸺雨が地面へと落ちていく。
驚いたような顔で、落ちていく。

⸺雪が地面へと落ちていく。
絶望したような顔で、落ちていく。

⸺雷が地面へと落ちていく。
怒ったような顔で、落ちていく。

雨宮早紀も、静寂雪也も、雷堂智哉も。
みんな、彼の名前を言いながら落ちていった。

「ごめんなさい」と、もう届かない謝罪を、彼⸺雲木空は虚空に向かって言い続ける。
しかしそれはいつしか、「やってやった」と、笑い歓喜する言葉へと変わり、雲木空は別のナニカへと変わってしまった。

【乗っ取られた、勇気ある者】


即席キャラの名前(もとい読み方)

雨宮 早紀《あまみや さき》
静寂 雪也《しじま ゆきや》
雷堂 智哉《らいどう ともちか》
雲木 空 《くもき そら》

Next