突風が吹き、灯っていた火がまた一つ消える。
「っ、また……」
この部屋のキャンドルの火が全て消えたら、あの方の魔力が……また、灯して行かなければ…あの方、私が敬愛する陛下のために。
私の仕事は、陛下の魔力を底上げしている術式に、常に灯されてなければならないキャンドルの火を見張り、消えたモノには新しく火の魔術で灯す。
それだけだから危険も少なく、陛下の力を支えることができる、戦いができない私にとって、誇るべき仕事なのです。
少し前までは、私以外の方もいたのですが、魔力火の見すぎで、失明したり、精神が擦り減って発狂してしまい、泣く泣くこの仕事を辞めていってしまいました。
ここ最近の陛下は、よく前線へ出向き、軍の鼓舞をしていらっしゃるようで、陛下の魔力の底上げという仕事は常に気が置けないです。正直なところ、いくら敬愛する陛下のためとはいえ、四六時中…たった一人でこの大仕事をこなすのは疲労が溜まりますが、私程度が疲れただけで陛下の力が増すのなら、休みなんていりません。それにこれから先…⸺
「⸺真斗くんが、勇者のジョブだったし、クラスメイトの味方をするのが、みんなの意見だったけど私は、みんなが言ったように、変だから」
だから、魔王である陛下を敬愛して、サポートをするのは、みんなが言ってる変な私でしょ…?
【なんの未練も無い、だからかつての学友に討たれても何も思わない】
「あの子、大丈夫なの?」⸺心配?
「えぇ…当然でしょう?まだ、完璧には割り切れていないもの」⸺…大丈夫。あの男には、たくさんの想い出の記憶が残っているんだろ?なら、目的を見失うことは無いはずさ。
「だといいのだけど…相棒、私達も仕事するわよ」⸺りょーかい。コッチも、いつもみたいにサポートするから。
「あの、”泥人形”と”涙目ピエロ”の先輩である”リバーシ”として、威張って再会したいもの!」⸺その一言がなきゃ、イイ感じに怪しい人物で終われたのに……このブラコンめ。
「ん?シロメちゃん…なにか言ったかしら?」⸺イヤ?なんにも言ってないよ…ナクロ。
***
「そういえば……泥人形。貴方って、家族がいたりしません?」
「ぁー……異父兄が二人?…いる、とは聞いた」
「異父兄、ですか…お会いしたことは?」
「上の兄は、理想郷を探しに行ったとかなんとかで、生死不明だし、会ったこと無いが…下の兄なら、一度だけ。まぁただ……喋り方が、その、珍しい…な、うん」
「へー…(まさかあの人じゃ…いや、そんな偶然無いよね?えぇ、無いでしょうし!)」
◇◆◇◆◇
私はただ、映像が映りっぱなしの水晶玉を見ていただけなのに……なんで別世界かと思ってた二つのお話が同じ世界で繋がりが近いの!?
思いつきか!?思いつきなのか?!………あの上司の思考をよく分からんわぁ。はぁ。
「とりあえず、気になるとこでお話が終わったし…上司の気が向いて、この物語の続きを書く気になるまではして預けだねぇ」
【水晶玉はすべてみえている】
「冬の印象ですか?朝寒いのに早めに起きて雪かきとかいう重労働をタスクに入れてくる、明日の予報☃が憎いです……」
「あっはっは、雪国の運命だねぇ…けどその分、雪遊びができるでしょ?」
「そんな風にはしゃげるのは十代までです。……まぁ、アイツが作った鍋とかは、数少ない冬の楽しみですけど」
「いいことあるじゃん!」
「というか、元々この家の土地って、貴女が所有権持ってるんじゃ…」
「ひゅうひゅひゅひゅ〜♪」
「口笛吹くならもっと上手く…いえ、もっとウザく吹いてください」
「えっ、もっとウザくなの?!∑(OωO; )」
【冬の前の一幕】
『親父、遅かった、な……なに、その箱』
俺が小さい時のある日、ずぶ濡れになりながら帰ってきた親父は⸺。
『はは…寂しそうに、しててなぁ。連れ帰っちまった♪』
⸺木箱の中で震える、二匹の子猫を連れ帰って来た。
昔も言ったけど、俺は、今だって同じことを言う。
「ただの猫ならまだしも……オメーが連れ帰ってきたのは、猫系獣人なんだがっ!!!」
今も昔も貧乏なのに、更に二人も増えたら……スゥー、無理だろうが!!!
しかもあいつら悪戯するわ日向ぼっことか言いながら仕事をサボるは色街に出かけて女子引っ掛けてくるわ…お兄ちゃん辞めちまおうか!?あぁ!?
【オレたちの家族に人間は二人います!(長男視点)】
「また会いましょう。そしたら…そのとき答えます」
その言葉を聞いて俺は、断られた、と思った。
だってそうだろう…今日たまたま出会えた子だぜ?
今日あったばかりの初めましてなのに、”また”、なんてさ……。
⸺いや、いくら一目惚れしたからって、手首掴んで告白かますとか………俺、犯罪者?
*
「あー、唐突過ぎて驚いちゃったや……せっかく向こうから声をかけてもらったのに」
ボクはずっと前から彼を見ていた。
だから”また”って行ったけど、彼からしたら、初めましてだったもんな〜…。
次会う時は、二人きりになれる時を狙わなきゃ……彼が他のオンナに盗られちゃうし、それに⸺。
「⸺あんな才能を持った若い子、稀だからスカウトしないと、センパイたちに勝てないし………頑張らないとなぁ」
基軸世界征服計画が世間にバレる前に、優秀な捨てご⸺んんっ、奴隷を確保して、この世界を征服しないとね。
【少年、君のせいで…この世界は終わるのさ(いつか言われそうなセリフ)】