『親父、遅かった、な……なに、その箱』
俺が小さい時のある日、ずぶ濡れになりながら帰ってきた親父は⸺。
『はは…寂しそうに、しててなぁ。連れ帰っちまった♪』
⸺木箱の中で震える、二匹の子猫を連れ帰って来た。
昔も言ったけど、俺は、今だって同じことを言う。
「ただの猫ならまだしも……オメーが連れ帰ってきたのは、猫系獣人なんだがっ!!!」
今も昔も貧乏なのに、更に二人も増えたら……スゥー、無理だろうが!!!
しかもあいつら悪戯するわ日向ぼっことか言いながら仕事をサボるは色街に出かけて女子引っ掛けてくるわ…お兄ちゃん辞めちまおうか!?あぁ!?
【オレたちの家族に人間は二人います!(長男視点)】
「また会いましょう。そしたら…そのとき答えます」
その言葉を聞いて俺は、断られた、と思った。
だってそうだろう…今日たまたま出会えた子だぜ?
今日あったばかりの初めましてなのに、”また”、なんてさ……。
⸺いや、いくら一目惚れしたからって、手首掴んで告白かますとか………俺、犯罪者?
*
「あー、唐突過ぎて驚いちゃったや……せっかく向こうから声をかけてもらったのに」
ボクはずっと前から彼を見ていた。
だから”また”って行ったけど、彼からしたら、初めましてだったもんな〜…。
次会う時は、二人きりになれる時を狙わなきゃ……彼が他のオンナに盗られちゃうし、それに⸺。
「⸺あんな才能を持った若い子、稀だからスカウトしないと、センパイたちに勝てないし………頑張らないとなぁ」
基軸世界征服計画が世間にバレる前に、優秀な捨てご⸺んんっ、奴隷を確保して、この世界を征服しないとね。
【少年、君のせいで…この世界は終わるのさ(いつか言われそうなセリフ)】
久々に、ゾクゾクとした感覚がキた。
この感覚は、私以外に言わせると…恐怖、らしいのだが、私はこのゾクゾクを……興奮と、捉えている。
「ひぃぃー!?アっ、アニキっ!ここっここここれ、マズイっすよぉーー!?!?!?」
「おおおお、おち、おちつけフッガ、みろぉ!商隊の護衛の兄ちゃんを見なぁ!奴は落ち着いているぞぉ!!!」
「あ!?たたっ、たしかにそうッスね!?じゃぁ…オラたちはまだ死なないッス!?」
ははっ…私のような冒険者が護衛中の、商隊を襲っちまうような、おマヌケ盗賊が騒いでいる。まったく、本当にマヌケな盗賊だなぁ。
「スィリル君!?ほっ、本当に相手にするつもりですかぁ!?あっ、あれは⸺本物のドラゴンですよぉぉ!?」
私を雇った商隊の隊長が、何か言っている。何故聞く?これは”よくある遭遇”だろう?
「⸺しかし、夏の時期に氷竜と遭遇するとは、久々だぁ……あは♡今年”も”、氷菓と暑さ対策には困らんなぁ、くっくっく!!!」
「「「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」」」
【スィリル、23歳。久しぶりのスリル】
絶体絶命のピンチの中、咄嗟に脳裏に思い浮かんだのは、昔言われた一言。
『⸺お前って、調子に乗ると駄目だよなぁ』
なんのヒントにもならねぇじゃねぇか!!!
全く役に立たねぇ走馬灯だなぁ!!!
「顔芸してるとこ悪いけど、サッサと食べなよ」
「いやだチーズ食べたくない、吐く」
「自己申告で食べれるって言ったティラミスなんだからさぁ…」
いやだ!このティラミス、チーズが重ったるくていやだぁ!!!
「……床に置くかあーん、どっちが良い?」
「え・・・?⸺って、前者は駄目だろ!!!まだ後者だろうが!!!」
「じゃあはい、あーん」
「ふぇ?あ、んむ……チーズが強くなければ、好きな味」
「そ?作ったかいあるね」
ほんっと私より料理上手なの腑に落ちない……おいひい。
【ただのいちゃつくカップルだこれ!】
手を伸ばす?
意味が無いことだ。
大声を出す?
意味が無いことだ。
希望を持つ?
意味が無いことだ。
ここは、罪を犯した人間が収監される大穴であり、地獄と称される、ディレスト監獄。
ロープを垂らして人が登り始めるとロープを切ることが趣味な監獄長や、どれだけ傷つけても死なない看守たちが所属する監獄を、知っている国家はもういない。
【じゃあこれを書いている人物は一体…?】