@耳を澄ますと
耳を澄ますと聞こえてくる。
ぴちゃぴちゃと歩く音が聞こえてくる。
耳を澄ますと聞こえてくる。
ポタポタと何かが垂れる音が聞こえてくる。
耳を澄ますと聞こえてくる。
ドクドクと鼓動する私の心臓の音が聞こえてくる。
風が駆け抜け、
甲高い悲鳴が部屋に響き、ぴちゃぴちゃと歩き出した。
@神様へ
始めは、争いばかりする人間がバカらしく思えた。
夜になっても炎が星空を消した。
叫び声とともに、命がどんどんなくなった。
私より小さい子供にも会ったことがある。
不公平だ。
命は平等であるべきだ。
私が望んだ世界はこんなものではない。
私は、世界から悪い奴らを削除した。
平和を望む、罪のない人間のみの世界を作ったのだ。
しかし失敗した。
悪い者を取り除いたのに、また争いが起こった。
次に、人間から邪悪な感情を削除してみた。
また失敗した。
平和にはなったが、見ていて気持ち悪い世界だ。
正気が感じられない。
失敗。
失敗。
失敗。
失敗…。
『かみさまへ
パパにあいたいです
パパといっしょにあそびたいです
いつになったらパパはかえってきますか?』
『神様へ
戦争をなくしてください。』
『神様。どうか我々をお助けください。』
一人の少年が私に問いかけた。
「かみさま。なんでたすけてくれなかったの?
ぼくしんじゃったよ?まだ、あそびたいのに…。」
涙を流す少年に、私は外を眺めたまま答えた。
「…平和は争いがなければ生まれない。
助けられない命は見捨てるしかない。」
「助けられなくて、ごめんね。」
私は溢れた感情を押し殺した。
@言葉にできない
こちらが本日のコースでございます。
使っている食材ですか?
前菜からメインディッシュ、デザートまで全て、
国産の食材をを使用しています。
シェフですか?
このお店にシェフはいません。
お客様が食べたいものを創造するのです。
お客様は何度もご来店頂いてると思うのですが、
覚えていませんか?
そうですか。
では、食べて思い出して頂きたいです。
味には自信がありますよ!
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いかがですか?
お客様が創造した“自分のための“コースです。
言葉が出ない?
お客様のご要望通り、
“言葉にできない”ほどの料理を提供いたしました。
騙された?
騙してなどいません。
私はお客様が創造したものを運ぶ者でございます。
直接手を加えることはできません。
この料理は、お客様が創造したものです。
これは、お客様が望んだことですよ?
@これからも、ずっと
時計が12時をまわり、日付が変わった。
今日も、1人の時間に取り残されてしまった。
雨の音が聴こえる。
時計のカチカチが聴こえる。
ココアを飲み込む音が大きく聴こえる。
時計が1時をまわった。
雨の音が強くなっている気がする。
時計の音は小さくなった気がする。
そろそろ目が重たくなって来た気がする。
カフェインが足りなくなってきた気がする。
時計が2時をまわった、そろそろ寝よう。
あと少しだけ、もう少しだけ進めたら終わりにしよう。
雨が小刻みにリズムを作り、急かしてくる。
惑わされるな。自分のリズムを維持しろ。
時計が3時をまわった、さすがにまずい。
このままでは日が昇ってしまう。
しかし目の前の課題は一向に進まない。
目が重たい。体がだるい。
ああ、早く雨の音に呑まれたい。
@Love you
「I love you」という言葉は世界に溢れている。
私が愛した人もこの言葉を使っていた。
だから私はこの言葉が嫌い。
あなたの愛は私だけではなかった。
あなたの愛は本物ではなかった。
あなたの愛を、私は受け止めることができなかった。
あなたは愛を求めて私のもとを去って行った。
私の愛はあなたには届かなかった。