@スリル
夏休み中の対決はどっちがスリルを味わえるか対決ね!
声を張り上げて言う君が、
妙に子供っぽくて僕もつい悪ふざけでノってしまった。
「あんなことやらなきゃよかった」
放火。昨日の深夜2時ごろ。家を抜け出して公園にこっそり火をつけた。もちろん大きく燃えちゃ困るから、落ち葉を集めて火をつけた。いくら勝負に負けたくなかったとはいえ、流石にやりすぎた。こんなのスリルなんかじゃない。ただの罪悪感だ。
次の日の夜。君から連絡が来た。
『〇〇公園に来てほしい』
僕が放火をした公園だ。
バレたのだろうか。
『ついたよ』
公園についても君の姿はなく、静かな夜が流れていた。
ちょっと早すぎたのかな。
その時、後ろから足音が聞こえた。
「遅いじゃないか」
君が来たんだと思って後ろを振り返ったら、誰もいなかった。確かに足音は聞こえたはずなのに、また静かな夜へと戻ってゆく。すると今度はあちこちから足音が聞こえた。僕をからかっているの?スマホの画面を開き、メッセージを送った。
『僕にイタズラしに来たの?』
メッセージを送って画面を閉じる。既読になっていたからきっと姿を現すだろう。そう思った瞬間、あちこちから聞こえていた足音は聞こえなくなった。
その代わりに、僕の後ろに気配を感じた。僕の体、腹部あたりから温かいものが流れているのにも気づいた。夜の公園でよく見えなかったが、その液体が何かわかったと同時に今まで感じたことのない痛みが僕を襲った。痛すぎて声も出ず、僕はその場に倒れ込みうずくまった。
やっとの思いで、僕の後ろの気配を確認すると、それは君だった。なんでこんなことを?君の目は笑っていた。そして僕に言った。
「今回の勝負は君の勝ち。
でもこれからの勝負は私の勝ちね!」
@飛べない翼
あと少しで届きそう
お母さんの背中まであと少し
パタパタピュンピュン
まだまだ届かない
お父さんの背中は高すぎる
パタパタピュンピュン
まだまだ届かない
一緒に背中を合わせてくれる
お兄ちゃんの手は温かい
パタパタピュンピュン
パタパタピュンピュン
@ススキ
ススキといえば秋を思い浮かべる。
しかし、秋と聞いては紅葉や銀杏を思い浮かべる。
秋の葉は落ち着きがあり、どこか切なく感じさせる。
私は秋と聞いたら赤や黄に染まった山を想像する。
焼き芋に並ぶ秋の特産物だろう。
でも、秋のイベントといえば月見だろう。
あの神々しい月にそっと添えられた月見団子。
普段の秋とは別の雰囲気を醸し出す月見。
このイベントにススキは登場する。
夜が深く、山の赤も黄もわからない時、
ススキだけは月明かりに照らされ、秋を教えてくれる。
黄金色に輝くススキは、私の心を奪って行く。
普段は見向きもされないススキだが、
驚くほどの美しさを隠し持っている。
私はそんなススキになりたい。
@脳裏
僕は君が嫌いだ。
校庭を楽しそうに走る君も。
手を挙げて元気に発言する君も。
クラスをまとめている君も。
ちょっと悪ふざけをする君も。
僕なんかに優しい君も。
僕は君が大っ嫌いだ。
嫌いなのに、
君の泣く姿が脳裏に焼き付いて離れないのは、
きっと君が僕にちょっと意地悪してるだけ。
嫌いなのに、
君のことを考えてしまうのは、
きっと僕の心の中が君で侵されてしまっているだけ。
嫌いな君をあの時守ったのは、
僕の中の正義が君を守りたいと言ったから。
僕は君が好きじゃない。
君の笑顔も、
君の涙も、
僕が守りたかったもの全部を持って逃げちゃったから。
@意味がないこと
私は仮面ライダーになりたい。
「ほらプリキュア可愛いでしょ?」
私の将来の夢は消防士さん。
「女の子はお花屋さんだよ」
私はボーイッシュな髪型がスッキリしていて好き。
「女の子なんだから少し長くてもいいんじゃない?」
私はサッカーが好き。
「女子なのにサッカー部なんだ。」
私は好きなものを沢山食べるのが好き。
「もっと女子らしい量を食えよ」
私はかっこいい服を着たい。
「自分よりかっこいい奴の隣を歩くのはちょっと…」
いつか隣を歩いてくれる人が見つかるって信じてた。
今もまだ信じてる。
人類は八十億人もいるんだから。
でも、信じなくてもいい。
私は一人で歩くのも好きだから。