消えてなくなりたい。
そう思ったことがある人はどれくらい居るのだろう。
僕はある。
別に死にたいわけじゃない。
だけど、生きたいわけでもなかった。
最近は夢を追う楽しさを知って、そう思うことは少なくなってきたけれど。
それでもたまに考えるし、きっとこれは僕の性質なんだと思う。
消えてなくならなくてもいいから、せめて少しの間だけでも。
ぷかぷかと何も気にせずに揺蕩っていたい。
〝泡になりたい〟
「ただいま」か。
「おかえり」ではなく。
夏を迎える側ではなく、夏に迎えられる側というわけだ。
面白い感覚だな。
夏は暑くて嫌いだ。
汗はかくし、日焼けはするし、蚊に刺されるし……良いことなんて。
「ない」と言ってしまうのは少し気の毒かな?
それなら、何か素敵なものを僕にちょうだい?
君には何やかんやで世話にはなっているからね。
それじゃあ、今年も言わせてもらうよ。
〝ただいま、夏。〟
あの頃の僕は、お喋りだった。
あの頃の君は、無口だった。
二人でおしゃべりといっても、話しているのは僕ばかり。
だけど、それでも良かったんだ。
僕の話の合間で耳をくすぐる小さな笑い声と優しい目が。
とても、とても好きだったから。
僕の、僕らの。
あの青い春は、炭酸の泡のように弾けては消えてしまうものなんだろうか。
ずっと鮮やかに輝いてはくれないものなのかな。
〝ぬるい炭酸と無口な君〟
〝正しさよりも優しさが欲しい
そしてそれを受け取れるのは
イルミネーションみたいな不特定多数じゃなくて
ただ一人 君であってほしい〟
この歌詞、何度聴いても泣きそうになる。
〝イルミネーション〟
人が居なくなった教室も、
遠くで聞こえる野球部の掛け声も、
ぬるくなったコーヒーを流し込む歴史教師も、
意味もなく時計の針を見つめる僕も。
何だかとても愛しく映る。
それは、この時間だけが持つ特別な魔法。
〝放課後〟