声が聞こえる
だれかが鈴をつけたらだめって言ってた
そういうもんかと思いながらうっかり鈴をつけた
りぃんりんと鳴る度に
きみは抜き足差し足魚を狙ってたっけ
あれから何年経っただろう
鈴をつけたらだめだって言葉の意味がわかるまで
ちゃんとわかるまで
きみが居なくなることなんて考えもしなかった
だってきみはあんなに小さくて
鈴をつけていないとどこにいるかもわからないくらいだったんだ
鈴の音が聞こえなくなって
どれくらい経っただろう
風に吹かれた鈴の音がするたび振り向いてしまうんだ
きみがまた甘えて擦り寄ってきてくれるんじゃないかと
期待してしまうんだ
時間よ止まれ
きみの輪郭が黄金に耀く夕暮れ
なによりも眩しい愛しい笑顔
これが夢だと知っているからどうか、
空が泣く
普通の雨の日はそんなこと思わないのだけれど
気分が沈むときにはひと粒の雨でさえ味方につけて
一緒に泣いてくれると思いたい
寄り添ってくれると思いたい
おとなになると
だれかの前で泣くのは勇気がいるから
これは涙じゃないんだと
目に入っては流れる雨の粒なのだと誤魔化して
おとなになると
素直に泣くのは力がいるから
空が泣いているから
わたしもつられて泣くのだと言い訳して
どうしようもなくわがままなこの涙を
曇り空はそっと拭ってくれている
君からのLINE
文字は音が聞こえない分だけ少し温度が低くて
「本当にだいじょうぶ?」
って聞きたくなる
のを
がまんして
どうかこちらの熱も
必要以上に伝わらないようにと願って
読まれるまでの時間と
読まれてからの時間を
返信が来るまでの期待と不安を誤魔化すのに使って
そんなこと露ほどにも知らないような短い言葉に
振り回されるんだろうね
夜明け前
仄暗い空に輝く星と傾く月
燦然と耀く光のお出ましを待ち
暗闇に震える小さきものたちを励まし
暗闇に紛れる強きものたちを労い諌め
未だ見えぬ光にふかくふかく礼をして去っていく
貴方方の潔さと慎ましさがいつか陽の光を見るように