飲み歩いて夜遅く帰っても誰にも咎められなかった。
疲れた日の夕食はカップラーメンと缶ビールで済ませた。
洗濯物を一週間溜めても特段困らなかったし、休みの日には何時に起きても構わなかった。
それが今はどうだ。
帰りが遅いと何度も電話がかかってくる。
どんなに疲れてても、仕事で帰りが遅くなっても、夕食を作らないといけない。
食器を片付けて、それから毎日洗濯機を回さないと追いつかない量の洗濯物を干して。
休日の朝はいつまで寝てるのかと起こされる。
ただ居心地いい関係のまま上手く暮らしていけると思っていた。
彼の世話をするために一緒に住むことにした訳では無いのに。
毎日毎日帰路に着く足取りが重い。自由な時間がないことがこんなに窮屈だとは。
1人でいたいなぁ。
互いに帰る場所がある。守るべきものがある。
何も無かった。指一本触れていないし、心の内に閉じ込めた2文字は、一生閉じ込めたままにするつもりだ。
それでも心は、想いは通じていると自惚れていたし、それだけで十分だった。
夕暮れ時の数十分、僕の隣で気怠げに煙を吐く貴方の姿を眺めながら、日々色々なことを話した。
この関係ももうすぐ終わる。貴方に会えない日々が始まる。
終わる前に、一度だけ。
君の一日をちょうだい、と貴方は言った。
たった一度の貴方との約束。
たとえ嵐が来ようとも、僕は必ず貴方に逢いに行く。
「クラスの男子もみんな来てるらしいよー。」
少しだけ久しぶりに会うクラスメート。
暑いし歩きづらいけれど、悩みに悩んで選んだ浴衣。
舞台上の催し物や、色とりどりの屋台なんてどうでも良くて。
終業式以来の、君の姿だけを探していた。
子供の頃思い描いていた夢はもう諦めたのか?
今、本当に逢いたい人は誰なのか?
現状を壊すことを恐れて、はじめの一歩が踏み出せないまま。
なりたい自分を夢見るだけにして、
好きな人のもとへ行きたい気持ちを押し殺して、
立派な羽根があるのに、飛ばない僕は、
閉ざされた鳥かごの中から、青空を夢見る小鳥のようだと思った。