アニメとかに出るこたつの上には、いつもみかんがのっている。でも、我が家にはそんなもの置いていない。
そもそも、私はみかんがあまり好きではない。
剥くのが面倒臭いからだ。
美味しいには美味しいが、費用対効果が悪い気がするのだ。
しかし、実家に帰ってみるとどうか。
そこにはこたつに身を寄せた父と母、こたつの上に乗ったみかんを食べる弟がいた。
「お帰り」
そう言われて、促されるままこたつに入った。
こたつの中には蹲っていた猫のペットの丸五郎さんがいたようで、少し体を蹴ってしまったが仕方がない。
__しょうもない話をしながら、みかんを口に運ぶ。
(…美味しい)
こんなときにだけ、こたつに乗ったみかんを好きになれる。
「冬休み」と言うのは沢山の思い出ができる。
クリスマスに正月など、一年のうちの行事と被っているからだ。
窓の外から風景を眺める。
雪が降っていた。
「あとは、ここが会社の中じゃなくて、寒くなかったら完璧だな…」
「先輩、何言ってんすか。口じゃなくて手を動かしてください、手を」
溜め息混じりに吐いた言葉に後輩が反応する。
そもそも、一応今は「冬休み」の期間中だ。なのに、なぜ俺たちは仕事なんてしているのだろうか。
エアコンも壊れていて、今はストーブしかない。そのストーブは諸事情で使えない。
(…なんて地獄だ)
そんな劣悪的な環境に留まっているのは俺と後輩のみ。普段は優しい良い奴なんだが、今は気が立っているようで、少し冷たい。
「こんなんになったのもあのクソ上司のおかげっすね」
「あー。全くだ…」
「はーぁ。もう辞めてやる」
もう何度言ったかわからない愚痴を溢しながら、仕事を進める。
「これが終わったら飲みに行こうぜ」
「お、いいっすね。行きましょ。勿論先輩が奢ってくれるんすよね」
「…図太くなったな」
「『冬休み』くらい甘えても良いじゃないっすか。かわいい後輩っすよ」