大狗 福徠

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11/23/2025, 7:56:01 AM

紅の記憶

思い出す貴女はいつだって夕焼けの中にいる。
青いリボンの巻かれた麦わら帽子をかぶって、
私に背を向けた茶髪のロングの貴女。
靡く真白のワンピース。
肩から覗くひまわりとネモフィラの花束。
全てを塗りつぶす紅の中で、
貴女の纏う色だけが鮮明に焼き付いている。
恋などという下賤なものではない。
愛などという高尚な思いでもない。
笑顔の似合う貴女。
私ではない誰かに微笑む貴女。
今はどこにいますか。
誰かと幸せになっていますか。
愛しい我が子を抱いているのですか。
大切な誰かと手を繋いで歩いたりするんですか。
どちらにせよ、もうお目にかかることはないでしょう。
夏の貴女よ、どうかお幸せに。

11/16/2025, 2:31:43 PM

君を照らす月
真昼の空に、月がいないわけなじゃない。
見えない、見えにくいだけでうっすらと、
ぽっかり今日に浮かんでいる。
取りこぼされたドット模様の丸みたいに。
真昼の月は、真っ白にそこにいる。
空の青を取り込んで、水色に。
太陽から、他人から受ける光の照り返しで照らしている。
誰かの力を上手に使って、別の誰かを照らしている。
弱々しい。非常に弱々しい。
しかし確かに照らしているのである。

10/30/2025, 10:00:33 AM

tiny love

見慣れた路地裏の隠れた喫茶店。
その奥の奥の方にいつもあなたは座っている。
湯気の出たカップを片手に、本を読みながら。
私はいつもカウンターに座るから、あなたと目が合ったことはない。
栗毛色の髪をした、赤い雫のピアスのあなた。
お互いに、存在していることは分かっている。
けれども、決して深くは交わらない。
ただ、たまたま同じ喫茶店にいただけ。
ただ、たまたま同じ時間帯にいるだけ。
それだけの浅い、浅い交わり。
隣人未満。顔見知り以下。
私たちの関係値に名称はない。
まぁ、それはそれとして。
あなたがこれからも、赤い雫のピアスでいればいい。
無表情に、かといってつまらないわけではない顔で
本を読んでいればいい、と思う。

10/24/2025, 5:48:27 PM

秘密の箱

一人ひとりが違う種族のように多種多様な僕ら。
ですからいつだって他人の頭の中身なんてわからないものでして。
キラキラ輝くマドンナの君は先日死にました。
今はギラギラベタつく復讐者です。
あなたはいつだって強かった。
勉強も運動も話も大変上手で見目もよくって。
非の打ち所なんて一切ない。
まさに素敵に無敵。
しかしあなたの内心は地獄であったらしくて。
毎日毎日補充した分以上に削り取られる心は
疾うの昔に底をついていたようで。
あなたは頭の中身を、思考をぶちまけて叫びました。
いつだっていつだって私は一人。
だから素敵に無敵になるんだよ。
だってそうじゃない?
じゃなきゃ生きづらいじゃない!!
笑って、泣いて、暴れて、蹲って、君は大変忙しそうだった。
あなたの中身はぶちまけられました。
ですからこんどはこちらのばんではないでしょうか。
あなたのようにキラキラしていたら壊れてしまうなら。
完璧だったからぶっ壊れてしまうのなら。
はじめからなんにもないままぶちまけてみましょうか。

10/23/2025, 12:11:04 PM

無人島に行くならば

一人は嫌いと常々笑う君がそんな問いをかけてくる。
無人島に行くならば君は何を持っていく?と。
特に一つとも言われなかったのであれこれ答えていると
君は持って行き過ぎだと吹き出した。
そういうお前は何にするんだと聞いてみりゃ、
これまた笑顔で全部と言いやがった。
お前こそ持って行き過ぎだとつついてやれば、
これまた楽しそうにきゃあきゃあ笑う。
お前が言った全部の中に、俺は居るんだろうか。
それとも物だけ持ってって、お前は一人で居るつもりなのか。
どうしてそんな顔で笑ってられる。
今にも泣きそうなその顔で。
でも絶対無人島なんて行かないと思う。一人は嫌いだから。
結局お前はからから笑って、そのままここを離れていってしまった。

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