I love
誰しも願望があります。
人体は願望の孵卵器です。
願望と、愛の形は直結します。
美しくなりたいという願望。
美しいものへの愛。
優しくなりたいという願望。
優しくしてくれたことへの愛。
守りたいという願望。
守られたことへの愛。
願望と直結した愛は、人へ流れます。
人へ流れた愛は、伝染します。
否応なしに、電線を伝うようにごく自然に、当たり前に。
感化された愛は願望へ成り上がり、あるいは成り下がります。
愛とは人を変える願望です。
そのままでいてほしいという願望。
ありのままを愛するという願望さえ人を変えます。
人を変えぬことなど不可能なのです。
愛している限り、双方が歪んでいきます。
それでも愛するのが、人という知能的生命体の性です。
たとえ貴方を塗り替えてしまうとしても。
歪ませてしまうとしても。
私はその後悔以上の覚悟を持っています。
ですから、どうかこの一瞬だけ、
愚かな私の願望を叶えてくださいませんか。
どうか私に、貴方を愛する権利を下さいませんか。
雨音に包まれて
夢見る少女のように
無我を歩いている。
一切はあたりに存在せず、私のみが在る。
ここは白とも取れるし、黒でもある。
夢見る少女のように、しかしその夢は穏やかでもたおやかでもなく。
抉る心の一雫により形を成している。
あるいは救う命の大部分、もしくは懐郷。
夢見る少女はここにはいない。
決していることはない。
夢見る少女はここへは来ない。
夢見る少女は少女ではなくなったから、ここへは来られない。
大きくなれない私は、夢見る少女のように。
夢見る少女のようにここにいる。
傘の中の秘密
雨上がり
ざあざあ降りの雨がある。
刻一刻強くなる雨がある。
積もった雨は地面を覆い、さぞかし歩きにくいことだろう。
お前はどうだ、なぁ。
この酷いざざ振りの中に勇み足で行こうとするお前よ。
民衆から振りかざされる視線。
重くなる期待。
自由の得られぬ身分。
しかしお前は止まらんのだ、友よ。
何がそこまでお前を責め立てるのか、突き動かすのか。
それとも、もう何も考えてはいられないのか。
友よ、俺はお前の足にはなれない。
ああ、お前の傘にもなれない。
俺もお前も違うものに絡め取られて雁字搦めだ。
友よ、ああ友よ。我が親友よ。
お前にはもう会えない。
立つ場所が違いすぎた。
俺の全てを使ってもお前のところまではいけなかった。
雨は上がらない。まだ上がらない。
友よ、ああ友よ。我が親友よ。
まだ雨は上がらないのだ、友よ。
表に出るべきではない。我々に傘はない。
友よ、少しだけ、今は少しだけ雨宿りをしよう。
足手まといと、邪魔だと言われても構わないから。
お前がずぶ濡れになるよりは、きっといいのだ。