「今日、夢に隆史くんが出てきたんだー。」
「そうなの?どんな夢だった?」
「隆史くんと、楽しく話す夢だよ。」
「そうなんだ。じゃあ正夢になったんだね。」
「あ!確かにー。」
うわぁ、あいつまたやってる。
ある程度顔が好みの人には、すぐこういう事言うんだから。ほんと、こういう人嫌い。
「ねぇ、結海ちゃん。」
「どうしたの?前田さん。」
「今日、夢に隆史くんが出てきたんだよー。それでね、夢の中で話していたの。そしたら、それが正夢になったんだよ。」
うん。さっき、その話をしてるの聞こえてたよ。まぁ、聞こえてなかったふりするか。
「あら、夢に原田くんが出てきたの?」
「うん!なんか運命感じちゃうなー」
「そうだね。」
あぁ、これは「隆史くんは私が狙っているから、邪魔しないでね。」という意味か。
でも、前田さんを敵に回すと大変なことになるから、しばらく原田くんとは関わらないようにするか。
ん?どこからか、激しい音楽が流れてきたな。
「ねぇ、前田さん。この音楽ってどこから…」
あぁ、朝か。
夢の中でも、目覚ましの音が流れることってあるんだな。
それにしても、変な夢見たなー。
あ、今日は月曜か。
学校行くの、めんどくさいなー。
まぁ、友達に会えるからいっか。
〜一時間半後〜
「結海ちゃん、おはよう。」
「璃子、おはよう。そういえば、今日こんな夢を見たんだよね…」
8月になると心霊、未確認生物、未来人についての番組が放送される事が増える。
僕はその手の番組が大好きで、放送される物の殆どを録画している。
ある日、「未来の警告をしに来た人は未来人だった」という、いかにもヤラセだと思わされる物の特集番組が放送された。
放送は深夜だったから、次の日学校から帰ってきたら見ようと思った。
翌日、その番組を家族みんなで見た。
ヤラセとわかっていても、やっぱり面白い!
色々な未来人が、戦争や大地震などを伝えてその後の行方が不明になっているものが多かった。
「この人、お兄ちゃんに似ていない?」
そう妹が言った人は、確かに似ていた。
「たしかに。お兄ちゃんが50代くらいになったらそうなりそうな見た目ねー。」
お母さんがそういった。
僕に似ている未来人は、とある女性に「明後日ナイフを持った男が、この家の住人全員を殺しに来るという事を聞きました。その男はもう、この辺りにいるから早く逃げてください。」と言ったらしい。
しかし、その女性はその事を信じなかった。
そして、その家の住人全員が、男にナイフで殺されたというものだった。
「これ、未来人とは限らなくない?その人が、偶然その事を知っていただけかもしれないし。」
妹がそういった。僕もそう思った。
10年後、「もしかしたらタイムマシーンを作れるのではないのか。」という説があがった。
世界中の研究所の研究員たちが、タイムマシーンの研究をしていた。
僕は、国内で一番規模の大きい研究所の、タイムマシーンの研究員に任命された。
昔から、タイムマシーンについてはとても興味があったから、とても嬉しかった。
その日は、1個230円するアイスを買ったぐらいだった。
その後、何回か近いものはできたが、なかなか完成はしなかった。
「もう無理なのではないか。」
そう言って辞めていった研究員もたくさんいた。
精神的に限界が来て、辞めていった研究員もいた。
しかし、僕は諦めなかった。
タイムマシーンの完成にあと一歩で近づけそうだったから。
そして、とうとう完成した!
ここに来るまでに、30年近くたった。
僕たちは、この世界で初めてのタイムマシーンを作り上げた!
ついに、タイムマシーンの動かすときが来た。
乗務員として、僕と研究所のリーダーが手を挙げた。
早速タイムマシーンに乗り、50年前へタイムスリップした。
50年前の研究所と同じ場所に着いた。
そこはまだ、閑静な住宅街だった。
「政府には、過去を変えるようなことをするなと言われている。気をつけろよ。」
リーダーはそう言った。
「もちろん、過去を変える気はありません。」
僕はそういった。
まず、周りの建物の写真を撮った。
どれも、今の建物とは全然違うものだった。
ある程度写真を撮って帰ろうとしたとき、後ろの方で泣き声と叫び声が聞こえた。
振り返ると、そこにはナイフで刺されて倒れた女性と、女性の娘らしき子供がいた。
「いやだぁぁ」
そう泣き叫ぶ子供も刺された。
助けに行こうとしたが、リーダーに止められた。
僕たちはそのまま現代へ帰った。
その夜、僕は眠れなかった。
泣き叫ぶ子供の声を思い出すだけで胸が締め付けられる。
次の日、リーダーと僕で報告書を作った。
タイムマシーンは大成功だった。
でも、僕はあの日の出来事が忘れられなかった。
「あの子達を救おう。」 そう思った。
その2日後、僕はこっそりタイムマシーンの管理室に入り、事件が起こった日の3日前日付を設定し過去に戻った。
過去に戻り、僕はあの子達が住んでいる家へ行った。その途中で、あの男を見かけた。
「もう、近くにいるのか…」そう思った。
インターホンを押すと、あのときの女性が出てきた。
「ええっと…どちらさまでしょう?」
「この少し先の家に住んでいるものです。明後日ナイフを持った男が、この家の住人全員を殺しに来るという事を聞きました。その男はもう、この辺りにいるから早く逃げてください。」
「あぁ、そうですか。ありがとうございます。」
いまいち信じていなさそうな口調で、女性はそういった。
事件が起こった日に日付を設定し、女性と子供の無事を確認しに行った。
二人は刺されていた。
家の中から、男性の叫び声が聞こえた。きっと父親だろう。
僕はその後も、色々な方法を試した。
結果は変わらなかった。しかし、僕は諦めなかった。
「何年かかろうと、絶対に救う!」
僕はそう思っている。
毎日、毎日、同じ事の繰り返しだと思っていた。
日々の出来事に変わったことが無さすぎて、一昨日の出来事なのか、それとも昨日の出来事だったのか、忘れてしまうほどだった。
ある晩、何の目的もなく外に出た。空には月が出ていた。満月だった。その月の周りでは雲が流れていて、色々な姿の満月を見ることができた。私は、満月の写真をスマホで撮った。あまりによく撮れたので、それをスマホのホーム画面にした。少しだけ、明日への活力になった。
その日から、2ヶ月か3ヶ月がたった。
特に理由はないのに、とてつもない虚無感を感じた。
「何もしたくない」
そう思い、畳の上に寝転がった。窓から満月が見えた。起き上がって窓から見ようとすると、ちょうど見えない位置に月があった。
私は月を見る為に外に出た。満月だった。
「そういえば、このスマホのホーム画面も月の写真だったな。また写真、撮ろうかな。」
そう思い、満月の写真を撮った。空には雲が一つもなく、星が輝いていた。
前に取った写真と見比べてみると、満月が全然違うように見えた。
「毎日、同じ事の繰り返しのように感じても、毎日が全く同じなんてことはないんだ。」と思った。
そのことに気づけた今晩は、「特別な夜」だったとあとから思った。