この世が無常だなんて、そんなことはわかってる。
だからこそ永遠を願わずにはいられなかった。
君との時間。
絶え間ない幸せの連続は、願うには十分だった。
ずっとこのまま。叶わない願い。
少しでも、願ってしまったのがいけないのか。
記憶に鉛が絡みつくような、感じたことのない感覚。
君が、僕に残してくれた証だったらな。
それなら、このままでも、いっか。
「ずっとこのまま」
家まで残り数十分。
あと一本さえ乗ればもう寒い思いはせずに済む。
なのに、お目当ての電車は現れない。
プラットホームは人もまばらで物寂しい。
おまけに容赦なく風が体温を奪っていく。
寒さが身に染みるこんなとき、恋しいのはあなたの…
と、思いを馳せようとしたそんなとき。
ポケットが震えた。
“晩ご飯できてるよ 今日は豆乳鍋”
あなたの特製豆乳鍋。私の大好きな冬の楽しみ。
エスパーみたい。
“ありがとう もうちょっと頑張る”
「寒さが身に染みて」
三日月と聞いて何を思い浮かべる…かあ。
地球の衛星で、日光に代わって夜の世界を支配する光の光源。
言うまでもなく天体の「月」。
これが多分普通。
でも私的には断トツでクロワッサン。
サクサクの生地にバターの香りに、
適度に弾力のあるもちもち食感。
違う違う、それは今回関係ない。
クロワッサンはフランス語で三日月の意味なんだっけ?あの時の君のドヤ顔すごかった。
そうそうあの形ね。三日月で一番美味しいと思う。
月よりパン。
「三日月」
それはエゴかもしれない。
食事を摂ることも寝ることも一人だってできる。
だがこれだけは声を大にして言いたい。
君と一緒にやるからいいんじゃないか!
この際言っておくと、
君が好ましく思っている私が作られる条件は、君が隣にいることだ。
だから、どうか。全て私の我儘にして、このままで。
「君と一緒に」
久々の快晴と徒歩の外出が重なった。
昨日の気象予報士曰く、このような日のことを冬晴れというそうだ。何はともあれ喜ばしい。
青く澄んだ空の下、燦々と降り注ぐ陽光を浴びながら歩を進めていると。
猫、
猫。
いわゆる日向ぼっこだろうか、塀に陣取ってその身に光を受けている。
丸々とした体がゆっくりと上下に動く。
まるで、と君が脳裏に浮かんだ。
「冬晴れ」