気がつくと夜が更けていた。
なんだか目が冴えてしまって、しょうがなく夜を生きていた間に。
もしかして眠れた?
隙間から漏れる光、これは…日の出。
カーテンを開く。
眩しい。じんわりと染み渡る感覚がする。
そういえば君だっけな、言ってたの。
人間には、自然の美しさに感動する感情が組み込まれてるって。
「日の出」
この世は無常だ。そう思えば期待せずに生きることができる。
そんな信条でいるからか、俺はカメラで一瞬を切り取るのを好む。
二度と訪れない空気を閉じ込める、と言うとキザったらしいが。
だが最近、「俺」を揺るがす変化が起きてしまった。
君の存在だ。
モニターに映る姿を見ると、一瞬では物足りないと欲が出てしまう。
勘違いしないでほしいが、君の不変を望んでいるのではない。変化の永遠を君と共に…
こんなはずではなかった。
「変わらないものはない」
カーテン越しの月明かりも良いけれど、漆黒の夜も味わい深く、美しい。
雲一つない星月夜。いつまでも見ていられるわ。
貴方がいてもいなくても。
ところで。いまごろ、サンタさんは世界中を飛び回っているのかしら。
こんなに澄んだ夜空を駆けるのなら、よそ見にはくれぐれも気をつけて。
心配したって、サンタクロースはこどものため。
イブなんてかこつけて、夜にもたれる私は悪い子ね。
「イブの夜」
今日は珍しく賭けに出た。
事の発端は、僕の好きな画家が久々に個展を開くと耳にしたこと。
ああそういえば、あの子も興味があるって言ってたっけ。
自分でも驚いた。…いや、でもこれはチャンスだ。
思い立った、いや思い出したなら吉日、考えつくままに文章を打った。
メッセージを送って二時間経過。
……既読がつかない。
普段なら大体返ってくる頃なのに。
…まあ僕も、結局二時間かかったし、おあいこか。
クリスマスも近いし。
プレゼントはあなたと過ごす時間が欲しい、なんてね。
「プレゼント」
ゆずを買ってきた。
私はゆず湯にしか使わないから、買うのは一年ぶり。
まあ今どき冬至を意識する人は珍しいのかもしれないが、ゆずの香りを楽しむにはお風呂がうってつけなのである。
湯船に浸かりながら、ゆらゆら浮かぶゆずを手に取る。
ごつごつした皮は少し押したぐらいではびくともしない。気持ち強めでむにむに。
そして香りを思い切り吸い込んだ。
酸っぱい…でもレモンよりは芳醇で甘い、くすぐったいような香り。
ほこほこぽかぽか、どこか懐かしい。
今度の君へのお裾分けはゆずにしようかな。
冬至、良い文化。
「ゆずの香り」