いつもの丘の上で。
この思いのように静かに雪は降り積もり、
来た時より深い足跡を残す。
2人寄り添っていた足跡は、帰りは1人分で。
離れていった彼女を追いかけるように、
足跡に自分の足を合わせて帰路を辿る。
少し横道に逸れて、バーの扉を叩く。
クラシックが流れる静かな店内に、
私のことを待っていたかのようにマスターがいる。
目が合ったマスターは1人なのを見ると、
何事も無かったように元の作業に戻った。
店内を軽く見回したが、誰もいないようだ。
私はいつものようにマスターの目の前に座る。
「おすすめで。」
マスターから少しため息が聞こえた気がした。
「なにかあったんですか。」
そう言いながら、冷蔵庫のようなところからグラスごとカクテルを取り出す。あまり頼んだことのないものだ。
「モスコミュールです。意味はお分かりでしょう?」
ハッとして店内をよく見回す。奥の席に誰かが座っている。服が壁の色と似ていて気づかなかったようだ。
「あちらのお客様からです。」
マスターがその人を指して言った。
「……じゃあマスター、私からあの人に。」
彼女とここで初めて会った時の思い出のカクテルを頼む。
マスターが彼女にカクテルを渡したのを見届けてからしばらくして。
『となり、いいですか?』
店の端っこにいた彼女が声をかけてきた。
「ええ、いいですよ。」
今度こそは、彼女を大切に。
空を雲が覆って。
街の灯りがぼんやりと届く。
明日の朝が楽しみだけど、
通行止めにならなければいいなぁって思う。
これからだんだん仕事が減って、または増えて。
だんだん学校が休みになった子供や学生が増えて。
なんかクリスマスっていう行事があって。
初詣になって、多くの人が来てくれるんだろうな。
…きっと、今年こそは。
去年はたまたまだし…
近くに別の神社ができたのは偶然だし…
忘れられてなんか…ないし……
でも…新しい神社…私の名前が書かれてたような気がするけど…気のせいだよね…
ほんのり嘆いた人間に聞こえない声が、雪に沈んでいく
ちょっとコーヒーに逃げ込んでみる。
砂糖いっぱいでミルクいっぱい。
……ちょっとあまくしすぎたかな…飲みづらい…
少し置いちゃったけど大丈夫かな…うん、まだせーふ。
………
昨日は甘くしすぎちゃったし、今日はブラックで飲みたい気分だし。
……んー、コーヒーってこんなに苦かったっけ…
また少し置いちゃった…うん、まだぎりぎりせーふ。
………
昨日は極端だったかな、ミルクはいいとして…砂糖はすこし。
……うん、ちょうどいい
さて、今日はもうひとがんばり…日付変わってるけどきにしなーい……
……あれ…コーヒー冷めちゃった…砂糖を入れなさすぎちゃったかな…時間は…そこまで経ってないし……そういえば、最近ずっと少し冷たかった気がする……私のせい、かな……
私が砂糖を入れなさすぎたから…甘くしなかったから…
もっと温かかったら良かったかな…優しくすれば良かったかな…
今まで通りじゃ無かったら…別れるなんてなかったのかな…
あぁ!あの時に戻れたらどんなに良かっただろうか!
あぁ、あの時私がこんなことをしたらどうなってただろうか。
あぁ...あの時の私はなんでこんなことをしたんだろうか...
後悔、すべて後悔。
後悔というのがパラレルワールドを生み出し、
後悔というのに縋る我々がパラレルワールドを願う。
過去から逃げて、今を呪い、明日を縛る。
パラレルワールドなんて観測できない。
少なくとも今は。
我々がいるのは三次元と呼ばれる世界。
これに全ての時間が同時に存在するものが四次元という世界。
全ての時間でそれぞれの世界があるのが五次元という世界。
我々がパラレルワールドというものを観測するためには、一度五次元に行かなくてはならないのだ。
タイムワープ、つまりこの三次元世界で四次元世界にたどり着けていない今、五次元を願うことはかなりの無意味である、と思われる。
完全に否定しない理由は、完全に否定出来る理由・証拠が現時点では存在していないからだが。
私とあなた、ふたり
どこまでもあなたといっしょ
どこにいても、いつまでも、
たとえ離れようとも、
絶対にふたり。
もう…離れたくない。
離れたら…許さないからね…?