逃げようとしても逃げられない。
責任とはそういうもの。
逃げようとしても逃げられない。
大人ってそういうこと。
だから僕は諦めた。
大人になることを、大人であることを。
ぼくは子供になった!みんなとあそんでたのしい!
資料を整理しながら。
ぼくは子供になれた!宿題は面倒だけど学校はたのしい!
細かい数字の修正をしながら。
ぼくはこどもなんだ!じゆうでたのしい!
プレゼンをしながら。
あれ、ここってなんて言うんだっけ。
でも大丈夫、ぼくは自由だから。
じゆう……だから……。
失敗した会議を振り返らず、泣きながら家に帰る。
「もう……つかれちゃったな………」
人生は冒険や!とか昔に流行ったような気がする。私は流行に疎かったせいであまりついていけなかったけど、たしかにそうだなって思った記憶がある。
人生って難しいもので、ゲームみたいにセーブ&ロードも出来ないし、記憶も消えない。
レベルアップなんて無いし、死んだらどうなるか分からない。親がどうかで全て決まる時もあるし、決まらない時もある。
だから夢想する。こんな人生だったらどうなってただろうか、って。もう、そんなことは起こりえないのに。
本当に滑稽な人生。
本当に馬鹿な冒険。
「お願い!」
1タップ。
届いて欲しいこの思い。
あなただけを願ったこの気持ち。
返ってきたのは、
「!&+#*@?&」
思いは虚しく散った。
目から滑り落ちる文字。
全てをかけたこの思いは届かず、
私は全てを失った。
夕日を背中に彼女に向き直る。
ありきたりなデート、
ありきたりな前置き、
ありきたりなプロポーズ。
全てがありきたりで、
周りから見ればなんの特徴もないこと。
でも、僕たちにとっては特別な時間だった。
一生にこの一度しかないだろう一瞬。
今でも、あの日の景色を思い出せる。
明日を願って、
自分は寝て、
今日を生きた、
自分が居て、
昨日を振り返って、
自分は起きて、
過去と、今と、未来を、
背負った夜にかかる天の川。
願いは、1年後も生きていれること。
今が辛くても、逆転なんてしなくていいから、
明日を、明後日を、来年を願う。
私を待ってる知らない誰かのために。