あなたとお揃いのマグカップ。
付き合って3日目に買った私との思い出。
残された唯一の、思い出。
私が愛したあなたはもういない。
私はあなたのことを愛していたのに、
あなたは私よりもあの子のことが好きらしい。
何が違うの?
口を開けばあの子の事。
私じゃダメなの?
最近は私と外に出ることが無くなった。
何をして欲しいの?私ならなんでもしてあげれるよ?
でも、まるで私なんていないみたい。
写真はもう捨ててしまった。
私の事がいらないなら、私もあなたなんていらない。
最後の思い出を地面に投げ、割った。
後悔した。
あなたはあの子の誘いも断って、私と一緒に居てくれたのに。
私の誕生日を祝うためだけにあの子と居ただけなのに。
本当に嬉しかった。泣いてしまった。
あなたはそれでも優しく言葉をかけてくれた。
こんな私に資格なんてないと思ってたのに、それでも、
あなたは私を、嫉妬を抱えた私を、愛してくれた。
だから私は、あなたを信じて、
どんな事でも、私の為だって信じて愛してみる。
でも、それも永遠じゃなくて。
また、他の子と一緒にいて。
今度は泊まってから帰るって。
なんで?なんで私といてくれないの?
なんで私がいるのにその子といるの?
捨てられる?嫌だ。
あなたが私だけを愛してくれないのなら。
あなたが私を捨てるなら。
捨てられる前に消えちゃおう。
また買ったお揃いのマグカップ。
また地面に投げて割った、マグカップ。
今度は、そのマグカップの破片を
飲み込んだ。
これで、ずっと一緒だね。
もしも君が君でなくなってしまっても。
もしも君が愛してくれなくなっても。
もしも君が別の人を愛していても。
もしも君が、生きていなくても。
「別れましょう。」
彼女は言った。こうなることは薄々感じていた。
ここ最近、彼女からの愛を感じなくなっていた。
「一応聞いてもいい?どうして?」
「あなたに魅力が感じなくなったから。」
即答だった。そこまで嫌われていたとは、、少し悲しい。
「…そっか。わかった、別れよう。」
彼女はそれを聞き、振り返り帰ろうと歩き出した。
しかし、彼女は1歩踏み出した時突然倒れた。
私が、彼女の背中を刺したから。
どれだけ嫌われようとも。
愛されていなくとも。
私は一途に、永遠に、彼女を愛し続ける。
たとえ彼女が生きていなくとも。
心音。
不規則な呼吸。
意味の無い机に爪を立てる音。
抑揚の無い歌声。
外から聞こえる蛙の声。
笑っている家族の声。
全てが奇跡的に組み合わさった時、
心音も、呼吸も。音も、歌声も。声も。
全てが聞こえなくなる。一瞬、時が止まる。
再び動き出した時、
その時にしか聞くことの出来ない、
人生で二度と聞くことの出来ない、
何よりも美しい、
私だけの。君だけの。
メロディーがそこに生まれる。
私が愛している…
人間だと思う。確証は無いけどね。
好きな人もいるし、嫌いな人もいる。
考えていることなんて分からないし、
理解されたこともない。
どちらかといえば嫌われてるだろうし。
それでも、
人間の笑う顔、悲しむ顔、つまんなそうな顔、話している顔、
私はどれもを愛してると言える。
自分なんてどうでもいいのよ。
私なんて誰でもなくて、どうでもいいから、
愛している「人間」という生物が幸せならそれでいいの。
だから私は嫌われ役を買って、
私以外のみんなが幸せに暮らせればいいなって思う。
そんなふうに考えるのなら、無意識にでも、
私は人間を愛しているのかもしれない。
夕方、まっくろな雨に包まれた街を歩く。
かつては賑やかだったのだろうけど、すこし寂れて、
どんよりとした雲でいっそう暗く、暗く、、
2つある電球の片方が切れて、
ひとりぼっちで暗く、さみしく照らす街灯。
壁が黒ずみ、新しく建てた頃の色も忘れてしまった家。
遊具が錆びていたり、撤去されて少し広く感じる公園も、
背の高い草が生えて子供たちがいた影も薄れていた。
もう、暗くなる。
雨が強くなる前に、家に帰ろう。