お題『変わらないものはない』
変わらないものはない。と言う意味の言葉があるらしい。それが【諸行無常】だ。
意味は、世のすべてのものは、移り変わり、また生まれては消滅する運命を繰り返し、永遠に変わらないものはないと言うこと。人生は、はかなく虚(むな)しいものであるということ。(四字熟語辞書引用)
萌香「……だって」
萌香は分厚い四字熟語辞書をめくりながら言った。それに対し全く興味のない真珠星(すぴか)が携帯の画面を見ながら適当に相槌を打つ。委員長が温かい紅茶を一口飲み答える。
委員長「人生って意外にあっけないものかもしれないわね……。ところで輪通(わづつ)さんその分厚い辞書どうしたの?」
萌香「地元の図書館で借りたの。ここまで持ってくるのちょ〜〜う大変だったよぉ。すんごい重いし……」
真珠星「それで、大きいリュックで来たわけか」
萌香「うん。……ってか夏休みの宿題に『四字熟語を使って何か文を作りなさい』って問題あるじゃん。あたし何も思い浮かばなくて困ってるの」
真珠星が身も蓋もないことを言い出した。
真珠星「ってかさ、携帯で調べりゃ良かったじゃん。私、そうしたよ」
萌香は手に持っていた辞書を床にバサっと落とした。
真昼間にゲリラ豪雨が降り続く中、カフェの店内で雨が止むのを待っていた萌香達。
真珠星の一言で萌香の心の中でもゲリラ豪雨が降り出したのだった。
End
お題『クリスマスの過ごし方』
真珠星(すぴか)が小学4年の時にとても仲が良かった友達の春美〔ハル〕から自宅で開催するクリスマスパーティーに招待されて行った日。NZL(ニュージーランド)から来日してパーティーに参加している中の一人、ハルの友達である、ヒメコがNZLのクリスマスの過ごし方を真珠星に教えてくれた。
ヒメコ「NZ Lは日本と違って【夏】だからクリスマスの日は家族や友人達で浜辺でBBQをしたり、ハイキングやキャンプしたりするのよ」
ヒメコの日本語は流暢だった。日本生まれの彼女は小学2年生の夏休みの時父親の仕事の都合でNZLに引っ越ししたという。真珠星は自分と少し重なる部分があって親近感が湧いた。
真珠星「日本の夏休みみたい」
ヒメコ「そうだね。あ、あとね。面白いのがサンタクロースがサーフィンしてやってくるの!」
真珠星「何それ〜!?ソリじゃないんだ〜(笑)」
他にも色々と教えてくれた。日本と変わらない部分もあるらしい。それはクリスマスプレゼントにケーキがあることだった。
End
お題『イブの夜』
雪が降り始めた寒い日の夜。街の中はクリスマス雰囲気でいっぱいだ。近隣の家々の外壁にはイルミネーションが飾られ、星や動物の形をしたモノから多種多様で赤や緑、白色に光る小さな電球が点灯している。
綺麗な外を眺めながら、祖母から頼まれたお遣いの帰り道【みゃぁ、みゃぁ】と必死に鳴く猫の声がした。
私(わたくし)は鳴き声のする方へ歩いて行くと、近所の公園に辿り着いた。ベンチの下でぶるぶると震える茶トラの子猫を見つけて、しゃがみ込んで覗いてみるとその子猫は私に向かって【みゃぁ】と鳴いた。
委員長「寒いよね。こっちにおいで」
と猫に話しかけるとよちよちとベンチの下からこちらに向かって歩いて来た。そっと抱きあげると暴れたりすることもなく私の腕にもたれた。私は首に巻いていた毛糸のマフラーを子猫の体を包むように巻き家まで持ち帰った。
そして子猫は家で飼うことになり、早速名前を付けてあげた。
委員長「クリスマスの夜に拾ったから、あなたの名前は今日から『イブ』よ。よろしくね」
イブと名付けられた子猫はまた【みゃぁ】と鳴く。
イブを飼い始めて5年経った今、暑さ対策で買った猫用う冷感マットに興味を示さないが、何故か人間用の冷感マットは気に入ってるらしく体を丸めて気持ち良さそうに眠っているのだった。
End
お題『プレゼント』
真夏の日差しが一番辛い午後3時、都内の繁華街で真珠星(すぴか)と委員長は冷房の効いたカフェでお茶を飲んでいた。委員長はまだ暖かい紅茶の入ったティーカップに手を添えている。一方真珠星はテーブルの横に置いてあるドリンクメニューを眺めていた。
委員長「私(わたくし)達二人だけで会うの初めてよね?」
真珠星「そうだな。いつも萌香がいるから3人でいるのが当たり前になってたからなんか不思議な感じだな」
委員長「本当にそうね。BBQで同じ班にならなかったら私達友達になっていなかったわ(笑)」
真珠星「それな!(笑)委員長さ、いつも忙しそうだったからさ、ぶっちゃけ休み時間声かけずらかったんだよね」
委員長「そうだったの⁉︎声かけてくれて全然良かったのに💦。……あの当時私……クラスで友達と呼べれる人がいなくて……休み時間一人でいるのが嫌で、時間を潰す為に担任や他の教科の先生達から頼み事を請け負っていたの」
真珠星「なるほどねぇ。そうだったのか」
委員長「えぇ。でも今は輪通(わづつ)さんと穂先(ほさき)、が私の側にいてくれているからそんな事せずに休み時間楽しく過ごせているわ。ありがとう」
真珠星「礼なら、萌香にも言いなよ〜」
委員長「もちろん。伝えるわ」
委員長は手を挙げて店員を呼んだ。そしてホット紅茶のおかわりと真珠星がメニューで指差すアイスカフェオレを店員に注文した。
真珠星「萌香の誕プレ決まった?」
委員長「えぇ。さっき行った雑貨屋で購入したわ。穂先さんまだ買ってないの?」
真珠星「うん、ごめん😓近くに服屋見つけたからそこ行っていい?」
委員長「いいわよ(笑)。でも意外だわ穂先さん、即決するタイプだと思っていたけど慎重派なのね」
真珠星「自分へのプレゼントはすぐに決めれるけど、人に送るとなると……なんか悩むんだよね」
まだまだ外は暑い中二人は注文した飲み物を飲み干して萌香の誕生日プレゼントを探すのだった。
End
お題『ゆずの香り』
今年も柚子を使った食飲料の品々が萌香の家に届けられた。ジャムにジュース、そして萌香お気に入りの柚子の皮が入ったシャーベット。
一口アイススプーンで掬い舌の上乗せるとすぐに溶け、さっぱりした柑橘系の甘味の中に少し皮の苦味がして柚子独特の香りが口いっぱいに広がる。小さなカップに入ったシャーベットはあっという間に食べ終えてしまった。
萌香「はぁ〜。美味しかったぁ!マミィ、今年は新作があるって英里(えり)さん言ってたよね?」
萌香の母親「うん。まだ試作段階らしくて使用したら感想が欲しいそうよ」
母親の友達、英里は柚子は勿論文旦(ぶんたん)や新高梨等果物を栽培してる農家に嫁いだ。都会生まれの彼女は田舎暮らしに憧れていたようで、萌香が幼稚園に入園した頃マッチングアプリで知り合った彼と2年の遠距離恋愛を経て萌香が幼稚園を卒業した年にめでたく結婚(ゴールイン)した。
段ボールの奥から小さい箱が出てきた。開けてみると液体の入った100ml程のボトルが3つ並べられ個々に【シャンプー】、【トリートメント】、【ヘアオイル】と記載されたラベルが貼付されている。
試しにボトルの蓋を開け香りを嗅ぐ。
すっきりとするほんのり甘い柑橘系、その中にもやはり柚子独特の皮の香りが混ざる。夏用に少しだけミントも配合されているようだ。
柚子の香りにはリラックス効果や落ち込んだ気持ちを向上させたり、苛立ちの緩和、気分転換、疲労回復等効果があるらしい。
楽しそうな萌香の表情を見て母親はホッと胸に手を添える。数日前まで萌香は酷く落ち込んでいたからだ。
萌香の母親「早速、柚子の香りの効果かしら(笑)」
と母親は微笑んだ。
End