お題『行かないで』
物陰から1人の黒髪の男子生徒が萌香達を見ていた。
男子生徒は萌香達に声をかけようか悩んでいる。
黒髪の男子生徒「どうしよう……どう声かけたらいいんだろう……」
すると男子生徒は背後に忍び寄った人物に肩を叩かれ
驚いて声を上げた。
黒髪の男子生徒「わあぁ!?」
黒髪の男子生徒の肩を叩いた男子生徒はきょとんとした顔をしたまま声をかける。
驚かした男子生徒「船星(ふなぼし)何もそこまで驚く事あらへんやろ。お前BBQで焼く野菜を取りに行ったきり戻って来うへんから、同じメンバーの奴ら先に肉だけ焼いて食べ始めてんで」
驚かした生徒、大神 天河(おおがみ てんが)に名前を呼ばれた黒髪の男子生徒、船星は萌香達をチラチラ見ながら謝った。
船星「ご、ごめん。急いで取りに行く」
大神「ちょい待ちぃ」
そう言って大神は船星の手首を掴んで、こそこそと内緒話を始めた。
大神「男やったら先にやることやってから野菜取りに行かな、あかんやろ!」
船星「やるって……何を?」
大神「ナンパやろ?湖畔におる女子に……ちゃうの?」
船星は何も言い返せない。
間違っているようで間違いではない、ただあの日あの女子生徒(萌香)が屋上から誰に向かって、叫んだのか知りたくて声を掛けようか迷っていた。
迷っていたら大神にナンパすると勘違いされてしまった。返す言葉を考えていたら、大神は僕を置いてあの女子生徒へ歩き出しているではないか。
僕は心の中で『まだ心の準備ができていないんだ。だからまだ行かないで!!』と叫んでいた。
お題『どこまでも続く青い空』
今日は、校外授業という名の遠足。
同じ学年同士、クラスの枠を超えて生徒だけじゃなく教師とも仲良くしようというのが目的らしい。
学校からバスで約1時間移動した先は都会から少し離れた自然豊かな場所だ。
最近流行りのキャンプもできる他、場所(エリア)によって異なる様々なアウトドアが充実している。
萌香達のクラスはBBQと酪農体験が出来る場所にいた。
萌香は空を仰いで歩いていた。
萌香「どこまでも続く青い空と……」
歩みを止めその先へ指を指す。
萌香「どこまでも広がる青い海!海はいいね」
真珠星(すぴか)が透かさずツッコミを入れる。
真珠星「海じゃねぞ〜。湖畔だ、湖畔。間違えるなぁ〜」
萌香「分かってるわよ!言ってみただけですぅ〜」
少し膨らました頬を真珠星に見せる萌香だった。
そのやりとりを遠くから見ている男子生徒が居たのをまだ萌香は知らない。
End
お題『衣替え』
高校生になってもうすぐ1ヶ月経ったある日。
教室のクーラーは稼働しておらず、窓を全開していたにもかかわず風が入ってこない教室で、朝のホームルームで担任が来るのを待っていた。
時間になって担任が半袖半ズボンという涼しくラフな服装で入って来た。それを見た生徒は皆険しい顔をしている。
担任「よ〜し。全員いるなぁO〜K!どうした?お前ら変な顔して?」
担任はわかっていないのだろうか。クーラーの効いていない蒸し暑い教室はさながらサウナ状態だ。それに加え冬服の制服のままである。
沈黙が続く中、クラスの“委員長“と呼ばれる少女が手を挙げた。
委員長「先生!私達の衣替えはいつですか?暑くてたまりません!!」
委員長の問いに生徒全員の目が輝く。早く、夏服に衣替えがしたいと……。担任は委員長の予想を超えた答えが返ってきた。
担任「あぁ。それな……今日の放課後職員会議で決めることになっている。決まり次第後日連絡するからそれまで冬服でよろしく〜」
私達の衣替えはまだ先になるみたい。
End
お題『声が枯れるまで』
声が枯れるまで力いっぱい屋上から叫んでみたら
グランドにいた全員がこちらを見たの。
びっくりしたわ。一目惚れした彼にしか叫んでいないつもりでいたのに……。
隣にいた友達にどうしてみんなこっちを見たのか聞いてみたら
「そりゃそうでしょ。『おーい。おーい!そこの生徒〜』なんて言えば皆んな見るっしょ!バカやってないで萌香も頭下げて!!」
そう言って友達は屋上から皆にペコペコと頭を下げていたわ。
その後すぐに屋上に来た生徒指導の先生に腕を引っ張られ指導教室に連れて行かれたのは友達の方だった。
友達は声が枯れるまで抵抗しあたしの名前を叫んでいた。
『先生!私じゃないって〜〜!!萌香だって!!聞いてよ〜」
警察に捕まった時の犯罪者のような姿だとあたしは思うのだった。
End
お題『始まりはいつも』
始まりはいつも突然やって来る。
誰も予想なんてできない。
そう、【恋】の始まりはいつもひとりでにはじまるの。
あたしの恋はいつもビジュアルから始まってしまう。
「あの人かっこいい〜」
昼休み学校の屋上でクラスメイトの友達と昼食を食べながらグランドを眺めていたら誰かも分からない生徒を発見しあたしの目に止まった。
End